第九話 〜アスナが地球へ行くお話 前編【暁 Ver】
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物の種子を持ち込み、不用意に繁殖でもさせてしまったら。ミッドの生態系が狂ってしまう。その逆も然りだ。それが例え、ウイルスのようなものであったなら最悪の事態になりかねない。その為にシャマル先生も同行している。八神部隊長は、その後もいくつかの注意事項を告げるとあたし達を促すように両手を胸の前で軽く叩いた。
「ん。そろそろ転送ポートに着くで。準備してな」
少しだけ体を震わせる振動と共に、あたしたちを乗せたヘリは転送ポートへ降りたった。初めて見る事になる世界への期待と──── ほんの少しの不安と共に。
「……綺麗」
誰かが惚けたように呟いた。空の青を湖面に写し、日差しを浴びてきらきらと輝いている。その湖を護るかのように深緑の森が広がっていた。湖畔にはテラスのあるコテージもある。転送ポートから跳んできたあたし達を出迎えたのはそんな光景だった。この光景を見ればアスナも少しは落ち着くかも知れない。
「あの、なのはさん」
「ん? どうしたのティアナ」
「アスナは?」
「え、あれ?」
なのはさんと一緒に周りを見渡してみても、ぼんやり顔だけ見当たらない。
「もしかして、どっか行っちゃった、かな?」
なのはさんの言葉が合図だったかのようにスバルが急いで耳を塞いでいるのが見える。ええ、正解よ。伊達に長い付き合いじゃないわね。あたしは大きく息を吸い込むと──── 静かな湖畔には、到底似合わない今日一番の大声を張り上げた。
『アスナはもう地球へ到着しただろうか』
ボブの言葉を聞いて桐生は、うんざりとしたように顔を上げた。
「ボブ? もう何回目ですか」
『しかし管理外世界だ。それに今のフラッターは只のストレージなんだぞ?』
「問題ないと思いますが。あなたがいないと、幾つかの機能が制限されてしまいますが、通常使用には支障ありませんよ。それに管理外世界とは言っても、未開の世界ではありませんから野蛮な原住民などもいません。恐ろしい怪物もいません。紛争地帯でもなければ、治安も比較的良好です。とくに日本は、ね」
遠隔操作によってボブから制御されている『フラッター』の欠点であった。流石に管理外世界まで行ってしまうと遠隔操作は不可能だ。有事の際はボブの『コピー』をインストールし、その後で本体と統合するのだが、コピーする方法も『工房』でのマニュアル操作となる為に今回のような緊急のケースには対応できなかった。
『……私はデバイスのAIとしては、大きくなりすぎた。余計な機能も随分と多い』
「それはあなたの責任ではありませんよ。私とアスナがそう望んだんですから」
アスナが『ボブ』と名付けたAIが自我
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