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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
アレスの卒業
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レデリカのように他者への配慮という、対人関係においてヤンの持ち合わせていない面を全て補えはしないだろう。

 だから。
「指揮官を見るのではなく、指揮官の見つめる先を見ると良い」
「見つめる先ですか」
「その指揮官が何を思っているのか、何を成したがっているのか。それを理解することができれば、その指揮官に必要とされる能力も理解できると思う」
「何を成したがっているか、ですか。それは難しい事ですね、自分の能力では解決できないかもしれません」

「必要があると思うのならば、頑張ればいい。それでも無理だと思うのならば、諦めて別の指揮官に仕えればいい。ま、副官なんて所詮は自分が指揮官になった時にどうするか勉強する通過点でもあるし、堅苦しくなく考えなくてもいい。ライナ候補生なら誰でも副官になってもらいたいと思うさ」

「では、アレス――先輩はっ」
「え?」
「アレス先輩はどう思いますか。私はっ!」

「卒業日和だな、アレス・マクワイルド!」

 + + +

 ライナの呟きかけた言葉を奪ったのは、アンドリュー・フォークの笑いだった。
 遠くからアレスを見つければ、上機嫌な様子で声をかけた。
 そんな声にライナの目が、フォークを向いた。
 一緒の取り巻きが思わず歩みを止めるほどの強い視線。
 人でも殺せそうな視線だった。

 しかし当のフォークは気付いた様子もなく、笑顔のままで二人に近づいた。
「優秀なものは羨ましいな。士官学校からいきなり前線とは十年ぶりのことだそうだ」
「随分とお詳しい。説得のためにわざわざ前例を探すのは大変だったろう?」
「なに。そんな大した労力ではない。資料を見るのは得意だからね。ん、なんだ、フェアラート候補生。いたのか?」

「端的に、検査の必要があると存じます。頭の」
「相変わらずだな」
 ライナの視線にようやく気付いて、フォークは頬を歪めた。
 しかし、それだけですんだのは本人が上機嫌だから、であろう。
「ま、今日はめでたい卒業式だ――多少のことは大目に見てやろう」

 呟いて、フォークは唇をゆっくりとあげた。
 アレスを舐めるように、顔をあげて見下すように見る。
 ゆっくりと手を広げれば、言葉を出す。
 確実に伝わるように、ゆっくりと、正確に。

「私は統合作戦本部の人事課に配属されることになった。裏方の仕事で残念だが、いたしかたないことだ」
「なるほど」
 全て納得したようなアレスの言葉に、フォークが笑みを広げた。
 フォークは単に士官学校だけに手を広げていたわけではない。フォークからすれば、学校だからと何もしていない人間の方が愚かに違いがない。

 そこまでは想像すらしていなかったが。
 呆れと共に吐きだしたアレスのため息に、フォークは笑みを止め
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