アレスの卒業
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うですね」
「ああ。ま、生きて帰ってくるさ」
「当然のことです」
ライナの眉が不愉快そうにひそめられる。
普段表情を顔に出さないライナが、珍しく表情を変える。
ただし、怒ることもなく、まるで拗ねた子供のようだった。
「何か、すまない」
「先輩が謝る事ではありません」
唇を尖らせる表情に、アレスは困ったように頭をかいた。
小さく笑えば、ますますライナの機嫌は悪くなる。
ごめんとアレスが小さく謝ると、仕方がないとばかりにライナは息を吐いた。
表情を緩める。
「カプチェランカの地は冷えると聞きます。お身体にはお気を付けください」
「ありがとう。そちらもな」
「学校生活で気をつけることもないと思慮いたしますが」
言いきってから少し考えて、ライナは唇をあげた。
悪戯気な笑みだ。
「これからは一人で無理だと思ったのならば、少しは助けてもらおうと思います」
「それでいい」
アレスの手がライナの頭に伸びた。
唐突に感じた暖かい手に、ライナは小さく目を細める。
「子供ではありません」
再び口を尖らせれば、ますます子供のようだとアレスは思った。
それを口にすれば、おそらくは本当に怒りそうだったのでやめておく。
細く甘い匂いのする髪の感触を感じながら、二度ほど撫でれば、手を止めた。
名残惜しげに髪を整える。
そして、ライナは表情をそのままにしてアレスの顔を覗きこんだ。
「先輩は……?」
「ん」
「先輩はどのような副官が理想だと考えられますか」
一瞬の迷い。しかし、その後に続く言葉はしっかりとした質問だ。
真剣な表情で問われる問いに、アレスが目を開く。
「いきなりだな。今から副官について考えても仕方がないだろう?」
「端的に、私が学生の間でお聞きするのは今しかないかと思慮いたします」
まあ、そうだがとアレスは苦笑した。
おそらくは卒業前に話す事はこれが最後だろう。
カプチェランカにいけば容易にハイネセンと連絡も出来ない。
そう思えば、彼女の真剣な問いにアレスは考えた。
もっとも理想的な副官は、理想的な指揮官と同様に曖昧な答えしかないのだが。
「指揮官のタイプによって、理想とするところは違うと思う。リン・パオ提督に、ぼやきのユースフがついていたようにな。もし、あそこにアッシュビー提督がいたとしても、上手くはいかなかっただろうね」
同じようにヤン提督にフレデリカ・グリーンヒルがついた原作のように。
彼女が副官として優秀であったのは、決して参謀としての実力があったわけではない。単純にヤンの生活を含めた壮絶な事務能力の欠如を補った形だ。
これがライナであれば、難しいかもしれない。
事務の遂行能力自体は負ける事はないが、フ
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