アレスの卒業
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わせた。
その言葉の意味を正しく理解して、スーンが目を開いた。
「カプチェランカって――それ、最前線じゃないか!」
言葉に、アレスは苦笑する。
通常、新規に配属される者は見習いとして先輩について仕事を学ぶ。
そこでようやく一人前といわれるようになるのだ。
前線ともなれば、仕事を学ぶことなどできない。
そんなところに、普通は新兵を配属などさせない。
ましてや、戦略研究科を卒業したエリートを送る事などない。
「なんで」
「嫌がらせの上手い人間がいるらしくてね」
「嫌がらせとか、そういうレベルじゃないでしょ!」
我がことのように怒りだすスーンに、アレスは肩をすくめた。
「いずれは行かなければいけない場所だ。早めでも問題はない」
「死にたいの、アレス?」
「死にたいわけじゃないよ。でも、結局のところどこでも同じだろう?」
苦笑したアレスに、諦めたようにスーンが息を吐いた。
「死ぬ可能性があるってこと理解している?」
「ああ。だが、それは誰だって同じことだろう。それとも死ぬのが嫌だからといって、別の人間にカプチェランカ行きを任せるか?」
「俺なら問題ない」
「――お前なら一人で相手の基地を全滅させそうだな」
「む。任せろ」
「本当に任せたくなるな。ま、でもいい経験と思うさ」
赴任が決まった本人にそこまで言われれば、スーンも返す言葉がない。
「わかったけど。でも、生きて帰ってきてよね」
「ああ。約束するよ」
頷いた言葉に微笑んで、ふとスーンが顔をあげた。
まだ言いたげであったフェーガンの脇を突いて、にっと笑う。
「さて。僕はこの後挨拶したい教官がいるから、フェーガンもくるでしょ?」
「ん、俺はこの後は特によて……」
「いいから!」
腕を引っ張れば、フェーガンは不本意そうにそれに突き従った。
「じゃ、元気でね。アレス」
しばらくの別れにしては実にあっさりとした様子に、アレスは苦笑する。
「何だ、あいつらは」
と、呟いた背後に、気配がした。
振り返る。
そこには無表情に、アレスを見ている少女がいた。
+ + +
「ご卒業おめでとうございます、アレス先輩」
「ああ。ありがとう、ライナ」
唐突の言葉に対して、礼をいうアレスに、ライナは頭を下げた。
銀色の髪がゆっくりと揺れて、戻る。
気を利かせてくれた先輩方に感謝の視線を送れば、遠くでこちらを見ているのがわかった。まるで動物園の猿のようとライナは思ったが、誰かに遠くで見られるよりも、アレスに正面から見られる方が緊張する。
らしくないですね。
アレスに視線を合わせながら、ライナは小さく息を吸った。
「後ろで伺いました。カプチェランカに行かれるそ
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