1年目
冬
冬B*Part 1*〜一人だけの決意〜
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目的地に着いても、俺の右手はまだ愛華を離さずにいた。
息を切らしながら辿り着いたそこには、団地などでよく見かける家なんかより数倍大きな家があった。どっしりとした門構え、大きな木が植えてある広い庭、また玄関まで続くようにライトアップされている道もある。そして、良く手入れされた長い毛並みの大きな犬が、庭にある小屋で呑気そうにうつ伏せて寝ており、その小屋には“ラブ”と記載されたプレートがかかっている。普段の愛華の姿からは想像できないが、この家を見ると愛華は育ちのいいお嬢様なのだと認識せざるを得ない。
「もしかして親父に会うつもりなのか!?」
愛華はそう言うと目を見開き俺の顔を見つめてきた。
「あぁ、直接話をつけてやる」
俺のその言葉に愛華は戸惑いを隠せないのか強く俺の手を握り返してくる。
「やめとけって! うちの親父すげぇ頑固なんだよ! そんな親父がいきなり来た相手の話なんて聞くはずがねぇって!」
愛華はそう言って俺のことを諭したが、そんなの聞き入れるつもりなどない。
そう思ってはいるのだが、目の前の家は今朝も訪れたはずなのに、今の俺の目には何者も寄せ付けない要塞のようにすら見えてくる。
俺はその時初めて自分の手が震えていることに気付いた。
手の震えはきっと寒さのせいだ。
行くって決めただろ! しっかりしろ、拓海!
自分にそう言い聞かせると、その悴んだ手で力強くインターホンを押した。
「はい、どちら様で……、あら、尼崎さん?それに、お嬢様……!?」
驚いた様子がその声からも察することができた。インターホンのカメラを通して外にいる俺たちの姿は見えているのだろう。
今朝訪ねたときにすでに一度聞いていたため、その甘ったるい声の主は愛華の家の家政婦だと確信できた。
「愛華の、いえ、山咲さんのお父さんにお話があります! 家に入れてください!」
インターホンからは、少し間をあけた後、少々お待ちください、とだけ言う声がした。そして、家政婦がパタパタとその場から離れる音が聞こえてくる。
俺の心臓は飛び出しそうな勢いで鼓動を刻んでいた。繋いだ手を通してそのことに気付いたのか、愛華は“大丈夫か”と声をかけてくる。俺は何も言わずその言葉に頷き返す。
そんな時、インターホンからは先ほどと同じ、だが、どこか冷たさの混じったような声が聞こえてきた。
「申し訳ございません。旦那様は尼崎様にはお引き取りいただくよう申されております。」
その言葉に俺はギリッと歯を噛みしめた。
「どうしてだよ!? 少しだけでいいんだ!! 話をさせてくれ!!」
そんな声はまるで聞こえていなかったかのように家政婦は言葉を続ける。
「それと、お嬢様は今から旦
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