episodeT 始まりの日?
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り越えた先に漆黒の宮殿が鎮座している。あれは確か《黒鉄宮》だっただろうか。いや、そんなことはどうでもいい。
「す、すすっ……!」
次々と新たなプレイヤーが淡い光を放ち登場する中、俺は思わず力の限り叫んだ。
「スゲーな、これ!」
「すっごーい!」
そして、何故か隣から異口同音でこそないが……ハモるように大きな声が。
「ん……?」
訝しんで隣を見れば、同じくこちらを向く少女の姿。
小柄で華奢な女性だ。俺の身長が百七十と少しで、目算二十は低いから百五十程度か。
女性アバター用初期装備に身を包み、白い肌と対照的にストレートで伸ばした髪は濡れ羽色とでも言うべき艶やかなパープルブラック。そして子供っぽく、くりくりと忙しなく動く大きなルビーの瞳。
その目が俺の視線と交錯して、彼女の眼がキラリと輝いた気がした。
「もしかして……ナーブギア初体験……かな?」
「ああ。奇遇だな」
ニヤリとした笑みにニヤケ顔で返す。隠そうと思ったが、過剰なフェイスエフェクトは忠実に俺の内心を表情へと映し出していた。
「うん、奇遇だね。……凄くない、これ?」
「ああ、凄い。てかヤバい! ニュースやらで散々凄いとは聞いてたけど、これだと本当に別世界へと生まれ変わったみたいだ!」
というより、俺はそもそも生まれ変われる――つまり、自分の容貌を作り変えられる世界だからこそ興味を示したのだが。
「だよね!」
仮想世界初体験者同士、なぜか意気投合。ログインしたての状態も相まってか凄まじくハイテンションだ。……周りの眼も気にせずに。
「いやー、この嬉しさを共感できるのはいいな! …………ところで、居心地悪いのは俺だけか?」
「…………奇遇だね、お兄さん。ボクもだよ」
どうやらバカやって反省しているのは俺だけではないらしい。そりゃそうだ。一万人が連続して出現する場所で叫んでたら迷惑にもなる。
「……一旦離れないか、ここ?」
「……そうだね」
俺と少女は周りからの視線から逃れるように歩を進めた。色とりどりな装備や髪、眉目秀麗なアバターが行きかう大通りを並びながら闊歩し、俺は口を開いた。
「一人か?」
「うん、そうだよ!」
「これからどうする予定だ? 実を言うと俺、説明書を全然読んでこなかったせいで誰かに道先案内人を頼みたいんだけど」
「お兄さん、つくづく奇遇だよ! ボクもそう計画していたんだ!」
無邪気な笑顔が眩しい奴だ。こちらも自然と笑みを浮かべてしまう。
「マジか! つくづく気が合うみたいだな! ――って、説明書読んでない人同士組んでも意味ないだろ! ちっ……使えねぇ……!」
「いきなり会った人に舌打ちされた!?
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