episodeT 始まりの日?
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最初に感じたのは奇妙な浮遊感だった。
ナーブギアはユーザーの脳とダイレクトに接続し五感全てを仮想世界のアバターへと繋げると聞いていたので、これは別の体へ移る一瞬のタイムラグだろうか。
ノイズが消え去り、視界が暗闇に染まる。
そして、すぐさま眼前に広がる虹色のリング。光の粒子に包まれる奇妙な感覚に思わず感嘆の声が零れる。
「おお……」
言語選択のウインドウが出てきたので、当然日本語を選ぶ。残念ながら英会話はそれほど達者ではない。その後今度はログイン画面が視界に映し出される。咄嗟に学校のパソコン授業で使用しているIDとパスワードを入力する。そうして手順通りに事を進めた俺は今度はアバターネームとアバターの容貌製作に移行するようにと伝えられるのだが……
「……名前はともかくアバターくらい用意してくれりゃあいいのに……」
名前の欄に《ハヤト》と打ち込みながらぼやくが、それも当たり前か、とすぐにかぶりを振った。このゲームは俺が初体験となるオンラインゲーム。そして初回購入者総数は一万人。ということは最大一万人の人間が同時刻に同じ世界へと集うのだ。さすがに昔やっていた旧ハードのオフラインゲームのように数種類の容貌から選択する設定だと見た目被りが数千人に昇る。さすがにそれは気色が悪い。
「てか、アバターの見た目なんざどうでもいいんだが……」
しかし、だからといって自分で容貌をいじるのが面倒だと思わなくなるはずもなく。
俺は仕方なく現実世界の自分の顔を適当に補強するだけで終えた。見た目のイケメン具合が戦闘力に比例するなら力を入れるが、むしろ微妙にキャラの立っていない微妙なイケメンなど死亡フラグが立ちそうで不安だ。
無難が一番だという判断に間違いはないと自信を持って言えるが、オンラインゲームをするのは初めてなのでこの程度で大丈夫かと不安にもなってしまう。
――しかし、
「問題ないな……」
自分の……いや仮想世界のアバター、ハヤトの漆黒の髪に触れて俺は満足げに呟いた。
このゲームを購入した最大の要因の一つを達成した俺は歓喜に染まる感情に突き動かされるようにYESを押し込んだ。再度の浮遊感に包まれ視界が純白に染まる。
そして――
「おおっ……!」
次に目を見開いたそこは完全なる仮想世界、つまり別世界だった。
ソード・アート・オンライン、第一層主街区――《はじまりの街》。
数多くのプレイヤーが行きかい、喧騒に包まれている。それらのプレイヤーが鎧や剣、槍に盾を構えながら西洋然とした趣ある街並みを闊歩する様は如何にもファンタジーだ。
本当にゲームの世界へとやって来たような錯覚。
目の前の広大な石畳とレンガ造りの建築物、緑色に映えた街路樹が彩りを添え、正面の建物を乗
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