第6話:小学生卒業
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何度も見た。俺も彼らに対して返礼する。「有害図書委員会」の中で決まった合図みたいなものであった。
スクールも残念ながら卒業と同時に辞めることになった。理由は、数年前のバブル崩壊による経済の悪化の余波がとうとう俺の家族にも押し寄せたために、スクールの代金を捻出できなくなったからである。スクールは続けさせてくれ、と親に何度も何度も懇願した。授業も真面目に出るようにするし、家の手伝いもアルバイトもするから、と。親父もお袋も決して折れなかった。いや、折れることができなかったのだ。親が留守の間、こっそりと家計簿を見たとき、最近の状況でも相当苦しかったようだ。俺のスクール代や試合へのエントリー代、水着代金などの捻出も親父が残業をすることで何とか出せていたようだ。そんな状況を知ったら俺が折れるしかないだろ。ただし、中学・高校では水泳部に所属するからその活動費だけ何とか捻出してくれ、との条件を出し、親父達はそれで納得してくれた。・・・父さん、母さん、ありがとう。
俺はスクールの先生・コーチに辞める旨を伝えた。先生方も残念そうであったが、俺が将来JO(ジュニア・オリンピック)やインハイ(インターハイの略)での活躍していることを楽しみにしていると激励の言葉をくれた。餞別にスクールのビート版とプルブイを貰った。
その日の練習前のプールサイドにて、先生方はスクール生に対して俺が辞めることを伝えられた。スクール生も俺を見て、びっくりし、残念そうな顔を向けられた。面倒見のいいお兄ちゃん、って言われていたし、それなりに慕われていたと思っていたからな。
知子や響も驚きようは凄かったな。知子なんか伝えられた瞬間、「え、え、どういうこと?」という感じで先生の横にいた俺にズカズカと詰め寄ってきたしな。壁に押し込められて「たっくんいなくなったら、男子の後輩の練習指導は誰がするのよ!」「春一番の試合も出ないっていうの!?」「帰り道、一緒にスクールへいけないじゃない!」「あたしとスクールで会えなくても寂しくないのもいいの!?」とか語気を荒げつつ、俺の腕を掴んで男顔負けの力で俺の身体を揺すってきたな。壁に頭ガンガンぶつかって痛かったぞ、あれ。それに質問の内容。前二つのような状況に関する問いは理解できるが、後二つのような質問は意図が分からんから答えられんかったぞ。寂しいか、一緒に行けなくなってもいいのか、と問われたらそりゃあ凄く寂しいし、お前とバカ話しながら行けなくなるのは凄く寂しいさ。ここでお前と俺は出会ったし、スクールの中で一番長く一緒にいたかもしれないからな。それでも最終的には俯いて、俺から手を離してスクール生の集まるところへズカズカ歩いて戻っていった。響も困惑した様子であったが、俺の家計の事情を伝えたら「そう、拓君が辞めるのは残念だけど、家のことなら仕方ないわ
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