第5話:泳ぎの中にドラマがある
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、人格的な面で相対的に考えて駄目という如何にも人としての面を否定しなくてはならないなぁ。それはいけないことだ・・・仕方あるまい。
「はいはい。お前さんには勝てないな。」
「あら?拓君は私に勝とうと思っていたのかしら。」
勝てないな、と俺は思いながら、本日3度目の紳士的行動を行うことをした。
俺の1フリ(100m自由形の通称)も満足できる泳ぎでベストを出し、全レースを締めくくることが出来た。今回は、逢を筆頭に知子、響のベストの更新が著しかったな。全国大会出場権取っちまったぞ、あいつら。クールダウンを終えた俺は、荷物置き場に戻ることにした。そのとき、大きな声援が聞こえた。あそこは、輝日東高校だったな。応援の代表がかすれつつも大きな声を上げて応援している。それに呼応して男子部員、女子部員が声を一生懸命出してレースで粘るチームメイトを応援している。
懐かしいな。俺も前世の学生時代、あんな感じだった。腹筋が3日間使い物にならなかったな。あんな体験は、今後出来ないと思ったし、まさしくそうだった。輝日東高校・・・か。
俺はこのとき、自分の進学先の一つとして輝日東高校を考え始めるようになった。
レース終了後、会場から最寄りの駅までの帰り道。
俺たちは川を右手に、往路でも通った河原を歩いていた。往路でもなんか見たことがあるな、と思ったが、今更アマガミで絢辻さんのお姉さんが犬と行き過ぎたお戯れをしていたりしていた、あの河原じゃないか。そう思うと、今この道を歩いている経験がかけがえのないものだと、感じてくるな。いやはや、人間認識一つですぐ印象変わるなぁ、現金な生き物だ。
そんな現金な俺はいま、機嫌の良くてくっついてくる知子やニコニコが隠せない響、興奮と喜びで一杯の逢に囲まれるという傍から見ればハーレムの状態であった。野郎の視線や、女子選手のキャピキャピした声が俺に振るかかる。お前ら、少しは落ち着け。これじゃ、おれが女の子をはべらせる小学生女キラーにしか見えないだろ。ったく。
そんな時、川の近くに赤いランドセルを背負ったさらさらなロングの黒髪の小学生が佇んでいたのに気がついた。その少女に最も接近した時に、その手には印刷された文字、鉛筆で書かれたペンで書かれた赤い丸で一杯のA3サイズの用紙を数枚手に握っているのが見えた。そんな用紙に彼女は、忌々しげな視線を浴びせていたようだった。身体が、震えていた。言葉は聞こえないが、何か呟いているような気がする。そして彼女は、俺達が歩いている方向とは逆方向に走り去っていった。彼女が後ろ向いたその一瞬、彼女の赤いランドセルに付いていた名札が見えた。
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