九話 「小さな一歩」
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うのでしたら従います」
「それでいい。ただ、疑問があれば訊くのは良い事だ。思考の放棄は成長性の放棄でもある」
命令通りに動くだけ、ではいざと言うとき困る事がある。白の方が頭の回転とか良い可能性が凄く高い。ならその発想やらなんやらは潰れてしまっては困る。
常に考える。それは大事な要素だ。
まあ、勿論俺の言うこと最優先にさせるが。発想の自由さは持たせてもその身の自由さまで持たれては困る。適度に思考を抑制させないと。
「それと、前言ったとおり手加減しなくていい。というより、詰めの甘さ無くせ。今のとか俺の腕決められただろ多分」
組手はそこまで大きな怪我をしないようにしている。だが、それではダメな部分もある。
腕を決めて骨を折ったり関節外したり、いざという時その選択肢を選ぼうとして躊躇しても困る。一回くらい慣れておいて欲しいのだ。前線張らせるつもりの白には特に。
だから出来そうならそこまでして良いと言ったのだが、どうもまだ躊躇しているらしい。無為にこの体を傷つけるのは拒否するが、必要なことなら遠慮なく折ってくれて構わない。
今のも腕を蹴るのではなくそのまま決められた気が……決められたよな多分。良く分からんが。
「酷く折らなければ後々まで残ったりしない。必要なとき躊躇わないで出来るよう、一回は俺で経験しとけ。命令だ、やれ白。そっちの方がお前は使える」
「分かりました」
平坦だけれど、少し嬉しそうな表情で白が直ぐさま頷く。うむ、それでいい。だからといって痛いのは嫌だから無抵抗で折られる気はないけど。
記憶にある中じゃ白はもっと何言われてもにこやかだった気がするけど、まあ、まだ幼いからか。少しずつ変わってくだろ。
そんな会話をしつつ適当に組手を続ける。攻め手になってもどうせ勝てないのだ、基本守り重視で続ける。
だが、守り重視では自分の技術向上もそつが出るだろう。白ばかり上げるのでは自分もある程度は上げないと。
(受け手と攻め手で役割決めた組手も後でやるか)
そんなことを思いつつ左手で白に向け牽制目的のフックを放つ。
白は俺の腕の内側を払い、滑らせるように右手で受け俺の拳を覆うように掴む。
そして拳の外側に出ている俺の親指、白はそれを優しく掴み、
全力でひねり上げる。
「――〜〜〜ッ!!?」
ポキッ。
そんな音が聞こえた気がした。
あ、これヤバイ。白実行早いな。
何故かそんな冷静な言葉が思い浮かべつつ俺は声にならない悲鳴を上げた。
「あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫だから気にするな。お前はよくやった。あれでいい」
心配気にいう白に左手を軽く振ってみせる。結構痛いが耐えられないほどではない。
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