九話 「小さな一歩」
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か。考えときますわ」
「……ありがとうございます」
(火車、か。死者を運ぶ妖怪でそんな名前のがいたな確か)
だが、受けてもらえてありがたい。
一通り話も終わったので気になっていたことを一つ。
「火車さんのその喋り方って余り聞いたことありませんけど、どこの人なんですか?」
「ああ、これは別に生まれやない。知り合いにこない喋りする人いてな、面白おもて真似してるんよ」
ああ、だからちょいちょい間違えるエセ弁なのか。
「後、口調とかもっと気安話してくれた方がボク嬉しいわ」
「分かりました」
気安く、か。調子に乗れば見限るのだろうどうせ。
ある程度下手に出つつ要求を言う、くらいがいいな。言葉通りに捉えるのもあれだ。
帰ろうとしてふと気づく。
ああそれと後、そうだそうだ一つまだあった。
「すみませんがさっきのに追加で、痺れ薬とかあったら売って貰えますか」
火車がにやっと笑う。
「よっしゃ、一級品用意したる。やっぱりあんたも好きもんやなあ」
ちげぇよ馬鹿。
森の中でじっと息を潜め対象を見る。そして腕を払い苦無を放つ。
静かに飛んだ苦無は一直線に対象に向かいその身を僅かに傷付ける。
対象は突然のそれに驚き一目散に逃げていった。
暫くして対象が逃げた先に向かうとそこでは白が待っていた。
その足元には対象である大きなうさぎが転がっている。先ほど付けた傷は小さく、倒れているのはそれが理由ではない。
「白、何分くらいだ」
「大体十分ほどです」
そうか、と俺は頷きうさぎに近づく。
ピクピクと痙攣しているそれを見て成果を確認する。そしてついさっき投げた苦無を見る。
黒いその身をよく見ればドロッとした塊がついているのがわかる。
毒だ。
前に採取し、乾燥させ粉末状にした毒の試しをしているのだ。作ったはいいがどれくらい効くのか実際に試さなければ分からない。それを今している。
「十分って結構早く回ったな。体が小さいせいか?」
うさぎを持ち上げながら俺は言う。これは回るまで三十分ほどかかるはずだと思ったのだが。
「回る速度や致死量にも差が出ます。その分早かったのでは?」
「かね。後でもうちょいデカイ獲物でも試さないとな」
もう少し奥に行けば猪とかいるだろ多分。
そう思いながら俺はうさぎに苦無を向けて振り下ろした。
干し肉を齧る。塩味が効いていて上手い。ただ口の中がしょっぱくなるのが悪いところだ。
モグモグと食みながら俺は白の拳を避ける。
「猪とか鹿って奥に行けばいると思うか?」
積極的に攻勢には出ず、チャンスが来るのを待ちながら聞く
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