九話 「小さな一歩」
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つい心の中で突っ込んでしまう。
真代、というのは偽名だ。天白から頭文字をとってマシロ。あいにく変化のこの姿で同じ名前を使うのもあれなのでこうしている。
「そうです。では、あなたが」
「お初に。火の車と書いて、かしゃ、言いはります。うちの家計言い表しておりますわほんま」
そう言い男、火車がケラケラと笑う。
エセ京都弁のこの男、その正体は商人である。それも忍具などを扱う男だ。真代の姿で街を巡り話す相手を作り噂を聞き色々と探した結果葛西のジジイにたどり着いて今日落ち合う事が出来た。
葛西が関係していると知ったときは色々と疲れた気がしてならなかった。何せ最初から会っていたのだから。だが、今思い返せば符号はある。交易品を主に置いてあるくせに街の中近くに店を構えるでもなく、火や水の国近くの道に店を置くでもない。まあ、他にも色々と思えば不自然だったところはある。だがまあ、今更だ。
探すと決めて手探り状態で色々やって二年ちょっと。少し感無量である。
「シズはんからの話で来ましたけどおたく、うちに何の用があるん?」
独特なゆったりとした言葉で火車が言う。
シズ、というのは葛西の下の名だ。シズマだかその辺だったはず。歳は離れているが二人には長い付き合いがあるらしい。
「色々と欲しいモノがありますので、買えたらと思いまして」
「へぇ」
「それと、コネを」
火車の目がじっと俺を見る。
「コネ、ですかいボクの」
「ええ。火の国や水の国などで同業者の方がいたら紹介して貰えないかと」
「そらまた、どうして」
「将来そっちの方に行く可能性がありまして。こんな風に買うくらいなものですから、色々と訳ありなんですよ」
じっと火車の目が見据えてくる。常に笑ったようなその顔と目からは何を考えているのかがよく読み取れない。
「……そやなあ、うちが信頼できる思えたらええですよ。流石に一見さん紹介するほどボク甘くありませんわ」
「ありがとうございます」
最初から紹介してもらえるとは思っていない。いづれの芽が出ただけでも有難い。コネがあれば探す手間なく、同時に信頼も相手から持ってもらえるから是非紹介されたいものだ。
そういう分には一族でずっと懇意にしてる、とかそんな家の奴らは羨ましい。信頼を積み立てる必要がゼロだ。
「欲しいもの言うとりましたが、今日は顔合わせ。どんなお人か見よ思ったさかい。シズはんから聞やした品は持ってきたが、大層な売り物は持ってきてへん。すまへんなあ」
「別に構いません。それと私は目に適いましたか?」
「もう少し見て決めますわ」
まあ良いか。そりゃ、あったばかりの相手にそんな簡単に危険なもの売れないわな。
「おい、用意できたぞ」
葛西の声が
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