第一物語・後半-日来独立編-
第五十六章 解放《1》
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の自分で言えるか」
「ならお前は可愛いんだ。なんせ俺がそう言ったんだからな」
今度は左手が光に包まれたが、気にはしなかった。
続いて身体中に線を引くように、次々と解放されていく。気付いてはいたが、何事も起こってないように振る舞った。
セーランなりの虚勢だ。
「俺には夢があるんだ」
「いきなりなんだ」
「いいから聞けって」
一呼吸し、肺に空気を送る。
軽く吐いて、また吸って。
「皆がいて、皆が笑ってる。そんな世界をつくりたい」
自分が言ったことなのに笑い、肩を震わせた。だが、奏鳴はその夢を首を横に振ることで否定した。
理解出来無かったからだ。
今の奏鳴には、まず理解しようともしていないが。
「馬鹿馬鹿しい。皆が皆、笑える世界などつくれるわけがない。他国が戦争を仕掛けて来た時、日来は何もせずに負けるのか? それで日来に生きる者達は笑えるのか?」
ならば、
「その逆はどうだ。日来が抗いを見せ、他国を攻めた時、その国の者達は笑えるか? いや、笑えるわけがない。お前が言っていることは子ども染みた夢物語、つまり偽善だ」
「だとしても、これが俺の夢だ」
「そんな甘い考えでは、何時か日来は落ちるぞ」
「何時の時代も結局は争い事で解決しようとする。目に見える敗北があるから、簡単に優劣を付けられるから争うんだろうけどな」
解っている。
人が争う種族だということを。そんなことは、身をもって知っている。
過去を振り替えるセーランの瞳は、何処か遠い所を見ているようだった。それでも口は笑みのままで、
「俺の言うことが子ども染みていることなんて理解出来てるさ。でもさ、争いを当たり前には捉えたくないんだ。目の前で大切な者達が死んでいくのは、生命をきちんと全うした時でいいじゃんか」
呟くように、しかし奏鳴には聞こえるように。
「戦争も結局は命を賭けただけの勝ち負けの戦いだ。だけど誰もが死に対して向き合えるわけじゃない。世界を動かしているのは、何時も“机上のあいつら”だ。罪の無い命を国のためだとか言って、幾万もの人達が黄金時代という時代から消えた」
「……それが、神の定めた運命だ」
「罪の無いお前も、黄金時代のその微かな流れによって殺されようとしている。いいのかよ、それで」
「自分自身が選んだことだ」
「けど、これは知っておいてくれ」
光が上へと流れていくなかで、解放場の上でセーランは語った。
声は小さかったが、外界の音は遮断されているために充分聞こえる大きさだった。
奏鳴の方は見ず、真っ直ぐ南を向いたまま。
「日来は世界を少しはマシにする。誰かに笑われても、誰かに邪魔されても突き進んでいく」
小さい声だったが、力の込もったものだった。
決心。まさにそれだった。
奏鳴の方を向いたセーラ
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