第一物語・後半-日来独立編-
第五十六章 解放《1》
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理解したセーランは黒い手を身体を無理に捻ることでかわし、後少しの距離を迷うことなく行った。
手の届きそうな場所まで来たのだ。
ここでやらなければ、意味が無い。
ここからやらなければ、少なくとも自分にとっては意味が無いのだ。
間も無くという残り時間の分からない恐怖が身体を強張らせるも、振り切るように宙を全速力でセーランは行く。
姿勢が崩れてもいい。
左手と両足による流魔操作によって、宙をまるで無重力の如く移動する。
黒い手からは実之芽の雷撃による援護で避け、追尾してくる少しの間に長く距離を稼ぐ。
行ってくれ。と自分自身に言い聞かせる。
立体に動くセーランの背を見ながら、彼の背中を押しように実之芽が叫んだ。
「行けえええ――――!」
後に続くように、後方にいるネフィアが、
「やってくださいな! 我が覇王――!」
瞬間。
『行っけ――!!』
『やってくれよおお!』
『頼んだ――――!』
『進めええ――!』
『行けっ! 行けっ!』
『突き進めえええ!!』
『いけるぞおお――!!』
『ぶち込め――!』
『やっちゃってえええ!!』
『ファイトオオオ!』
などと、セーランの周りに映画面|《モニター》が表示された。
映るのは日来の者達。と、なかには辰ノ大花の者達もいた。
それも素顔を晒して。
後から黄森による罰も省みずに、必死になってセーランの背中を押した。
次々と映る映画面のなかで、同じ日来学勢院の同級生が映る映画面もあった。
これまでにもあったが、最も目に入ったものは次の順だ。
始めは美兎から。
『信じてますから』
宇天の長を救出し、無事に日来へと戻って来ることを。
次は灯。
『あんたがやると決めたことなんだから、きっちりと自分の尻は拭きなさいよ』
悔いの残らないようにしろ、と言うことだ。
最後に、美琴。
『わたしは、セーランがやること……だいじょうぶって、信じてるよ。だからね、やってきて……悔いの、残らないように……!』
皆の言葉が聴こえる。
聴こえたがセーランは何一つ、彼らに言葉を返さなかった。
今自分がやるべきとは、宇天の長の元へ辿り着くこと。その役目に集中するために。
表示された映画面が背後へと流れ、だが、なおも聴こえる声。
黒い手によって表示された映画面が割れるも、次々と表示されていく。
誰もがセーランの背中を押した。
誰もが彼に望みを託した。
誰もがあの者ならやれると信じた。
だからセーランは応えようとした。行動によって。
少しの望みを抱き、解放場を背負う戦闘艦の外装甲へと流魔線を繋げた。
解放場から放たれる光はもう濃くなり、なかにいる奏鳴の姿を完全に消した。焦りからにじみ出る汗は気にも止めず、繋げ
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