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紅き微熱と黒き蓮華
第三話
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っと来てくれるかしら」

キュルケは近くで作業をしていた黒髪のメイドに声をかけた。
呼ばれたメイドは怯えの色を滲ませながら対応した。

「な、なんでしょうか?」

「この人を厨房まで案内して何か食べさせてちょうだい」

「畏まりました」

「じゃあまた後でね」

キュルケは体を翻すとすぐに食堂へと消えていった。

「…では、参りましょうか…ええと」

どうやら名前が分からないらしく、それに気づいた彼は短く神田だ、と告げた。
すると、平民の立場にいる神田に対しても敬語を使おうとするのでそれを制し、自分がキュルケの使い魔であることを付け加えた。
しかし、仕事柄故か、彼女の敬語は崩れず、諦めた神田はせめてもと思い様付けは控えてもらった。

黒髪のメイドの名はシエスタと言った。
顔立ちはここにいる人間達とは少し異なりリナリーや今朝会った平賀才人寄りのアジア系の顔立ちだった。
聞けば、祖父が東方(元いた世界で言うアジア辺り?)出身らしく、試しに言ってみた蕎麦について、知っているどころか彼女の大好物だったことには大変驚いた。

そして、蕎麦談義に花を咲かせているといつの間にか厨房の前まで来ていた。

「―――、そうなんですか。フフフッ」

「…どうしたんだ?」

「いえ、神田さんがこんなにお話しする方だとは思わなかったもので、つい」

「ああ?」

不意に言われた言葉に、思わず喧嘩腰の口調になってしまい、シエスタはヒッ!と少し怯えてしまった。

確かに彼女の言う通り、神田は饒舌になっていた。
それは彼女の蕎麦好きに何か感じるものがあったのか?
はたまた、蕎麦が織り成す力と言えるのか?
あれこれと考えてみるが、いずれにせよ、神田には知るよしもなく、思考が泥沼に嵌まっていくだけだった。

だから、神田は気づかなかったのだろう。
その時、俯いていたシエスタが小さな声で「ごめんなさい」と呟いていたことに。


中に入ると恰幅の良い男が声を張り上げていた。

「よし!みんな休憩に入って良いぞ!!」

丁度、仕事が一段落したようで、シエスタはその男の元へと近づいた。
彼はシエスタの存在を認めると、神田を見ながら口を開いた。

「シエスタ!遅かったじゃねえか。それにそこの部外者はどうしたんだ?」

「すいません、ミス・ツェルプストーにこちらの神田さんの食事を用意するように頼まれましたので」

「そういうことか。貴族は嫌いだが、その点ゲルマニアの奴等は好感が持てる。…朝の余ったシチューでいいか?」

「ああ、昨日の昼から何も食ってねぇからな。とりあえず腹に入れば良い」

神田の偉そうな態度にマルトーの眉が上がり、慌ててシエスタが言葉を紡いだ。

「マルトーさんっ
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