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空を駆ける姫御子
第七話 〜花言葉 〜Language of flowers〜 -花葬-【暁 Ver】
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すね。花束をお持ちなって」

 そう。ぽっかりと午後から予定が空いてしまったあたし達は、久しぶりに食べ歩きでもしようかと三人で繰り出したのだ。

「え? そう……なんだ」

 先程とは違う歯切れが悪い返答に何かいけない事を言ったかと考えていると、彼が額に指を当てて何かを聞いているような仕草をした。恐らくは念話だろう。念話が終わると突然、彼が走り出した。驚いたあたしも走り出し彼と併走する。

「……先輩から連絡があった。件の犯人と交戦中だそうだ」

「あたしもお手伝いします。下っ端ではありますが、あたしも管理局員ですから」

 越権行為だし後でお叱りを受けるだろうが、起こっている犯罪を見逃すことは出来ない。これがあたしの秩序だ。彼は少しだけ考え、諦めたかのように口を開いた。

「これは僕たちの……911の管轄だ。だから危ない事はなし、だよ」

 バリアジャケットを展開しながら、あたしは頷く。状況によってはその限りではありません。それを口には出さず、スピードを上げた彼に遅れることなくあたしも足に力を入れた。






「交戦中ではなかったんですか?」

 廃棄区画に入ったばかりの路地。その袋小路に彼は……いや、それはあった。全身数カ所を撃ち抜かれ、止めとばかりに心臓の位置に突き立てられた大型のナイフ。物言わぬ死体と変わり果てた──── リチャード・エヴァット三等陸佐。

 そして遺体の周りと体を隠すように……赤紫色をした蝶々のような花びらが袋小路に吹き込む風でひらひらと舞っていた。陰惨な殺人現場である筈なのに。蝶のように舞う花びら。そして袋小路に差し込む陽光と胸に刺さるナイフが、墓標にも見えて。まるで……神聖な光景を見ている感覚に囚われる。

────── 花葬

 頭を振る。また、花か。勘弁して欲しい。一体何でこんな意味のない……いや、違う。犯人には()()があるのだ。風で舞い上がる花びらを摘む。ウチのお花大好き娘に聞けばわかるだろうか? 花の名前も……花言葉も。

 あたしは遺体の前で項垂れているスギタ二等陸尉に声を掛けるべく口を開こうとした時。後ろから薄ら寒い気配を感じた。腰のアンカーガンへと気取られぬように手を伸ばし、引き抜くと同時に撃つ。振り返り様の僅か二秒足らずのクイックドロウ。だが、舌打ちをする。外した。姿も見えない。

 あたしは再度、彼に声を掛けるべく振り向こうとして……首筋にチクリと痛みを感じた。全身から力が抜け、自分の迂闊さを呪いながらその場に崩れ落ちた。声を出そうとしてもそれすら侭ならない。なん で。そう か その 可能 性もあった。馬鹿だ、あ たし。ごめ ん。

 倒れ伏したあたしの視線に入る見慣れた支給品である革靴と、後ろから近づいてくる何者かの気
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