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「泣かないで」
「苦しまないで」
「大好きだよ」
抱きしめても泣き止まない彼女に
僕は 一つ一つ気持ちを込めて囁いた
そして
僕と彼女の体は傾き
地面へ吸い込まれていく
できるだけ痛くないようにと
僕が下になるような形で 落ちる
それは 空を見上げる体制だった
最後に僕は
あの日の2人を見た
嗚呼、驚いている。
そして 一つ瞬くと
動かないはずの兄が動き出して
こちらへ走ってきた
「なんでっ、、!?」
必死な顔した兄の両目には
僕と彼女が 映っていた
伸ばされた手は
しっかりと僕の手首を掴んでいて
その瞬間 僕の腕の中から 彼女が消えた
兄の涙が こぼれ落ちて
僕の頬を濡らす
「兄ちゃん、、何してるの?」
「っ、、、」
「泣いて、、、るの?」
兄は何も言わずに
僕を引き上げて
力強く抱き締めてきた
「兄ちゃん、、っ痛いよ、、」
そして僕も泣いた
強い風が吹いて
僕の視界の端に白いワンピースが見えた
涙でぼやけていたけど
それはきっと彼女で
優しく微笑みながら
兄の背中越しに
僕を見てくれていた
それが悲しいのか嬉しいのか
よく分からなくて
僕は泣いた
・
その日、僕は兄と母に
さんざん怒られて
良かった、良かったと
たくさん泣かれて
そして
涙で濡れた 汚い顔で
たくさん笑いあった
止まっていた時間が
やっと動き出した そんな気がした
・
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