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美しい毒
第七章
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第七章

 その庭に行きだ。薔薇に近付く。見ればだ。
 これまで見た時には気付かなかった。しかしである。
 今の薔薇達にはだ。虫が全く近寄っていなかった。それを見てだ。本郷は険しい顔になり役に話した。
「間違いないですね」
「虫が何故いないか」
「農薬を撒いた花には虫は寄り付きませんから」
 それと同じだった。即ちだ。
「この薔薇達にですね」
「毒があるな」
「薔薇全部に毒を撒いたんでしょうか」
 本郷はまずはこう考えた。
「それで奥さんを」
「そうかも知れない。だが」
「しかしですか」
「それだとばれやすい。幾ら何でもな」
 薔薇全てに毒を撒いてはだ。流石におかしいというのだ。
 しかもだ。よく見ればだ。
 薔薇には確かに花が近寄っていない。だがそれでもだ。
 僅かでも集ってきていた。ある場所を囲む様にしてだ。
 その囲まれている場所の中央の紅の薔薇を見てだ。本郷が言った。
「あの真ん中の一番大きな薔薇の花ですかね」
「調べてみるか」
 役もその花を見て言う。
「少しな」
「ええ、それじゃあ」
 その薔薇に近付いてだった。
 本郷が銀の指輪を近付ける。するとだった。
 すぐに曇った。まるでガラスがそうなる様に。
 それを見てだ。二人で話した。
「間違いないですね」
「この薔薇だな」
「じゃあこの薔薇を気をつけて取って」
「調べてみよう」
 こう話してだった。二人でだ。
 花を取り調べてみる。その結果だ。
 花には遅効性の猛毒があった。嗅いでそこから身体の中に入るものだった。その事実を突き付けられてだ。榊も項垂れるしかなかった。
 こうして事件は解決してだ。榊は警察に連行された。真実は明らかになったのだ。
 しかし早苗はだ。母がいなくなった屋敷でその庭の紅の薔薇達を屋敷の中から見ながらだ。そのうえで本郷と役に言うのだった。
「寂しくなりましたね」
「お母さんがいなくなってですか」
「はい、それにです」
「それに?」
「榊さんもいなくなりましたし」
 こうだ。紅の薔薇達を虚ろに見ながら話すのだった。
「それで」
「ですがあの人がですよ」
 本郷が話す。
「お母さんを殺したんですよ」
「わかっています」
「それでもなんですか」
「確かに母に嫉妬していました」
 恋仇、それ故にだ。
「ですがそれでもです」
「いい人だったんですか」
「私にはいつも親切で何かと気遣ってくれて」
 それが榊だったというのだ。
「とてもいい人でした」
「そうだったんですか」
「けれどそれでもなんですね」
 暗い顔で薔薇達を見ながらだ。早苗はさらに話していく。
「あの人がお母さんを」
「人には色々な顔があります」
 ここで言ったのは役だった。
「善もあれば悪も
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