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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十一 兄と弟
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の声は刀と刀の激しい刃音に掻き消され、霧の彼方へ消えていった。
















凍りついた空気の中で火花を散らす。
目にも留まらぬ速さで繰り出される剣戟。空中で白き軌跡が幾度も交わり、甲高い音が濃霧に響く。

どれほど打ち合っただろうか。普通ならばとっくに疲れ切るところ、双方ともまだまだ余力があった。滴り落ちた汗が滴下し、水面に波紋を描く。

「甘くなりましたねぇ…貴方が仲間などと」
鬼鮫の冷笑と激しい太刀を、再不斬は真正面から受け止めた。ハッと鼻で笑う。
「仲間ってのも、そう捨てたものじゃねえぜ?」
鬼鮫の手元を狙い、押し下げる。負けじと押し返してきた鮫肌の勢いを利用し、間合いをとる。
すかさず脇腹目掛けて振り切る首切り包丁。

「なら、そのお仲間さんに手を貸してもらったらどうですか?」
素早く身を翻し、首切り包丁の猛攻を止める。そのまま押し切って、相手の刀を捲き落とす。
鮫肌が半円を描いた。

「そんな野暮な真似する奴なんざいねえよ。第一、」
再不斬の構えが崩れる。絶好の機会に鬼鮫は口角を吊り上げた。間髪容れず、鮫肌を振り翳す。


「今は必要ねえ」

ガクン、と膝が落ちた。突然動かなくなった片足に鬼鮫は目を見張る。
見下ろすと、己の足に包帯が絡みついていた。蛇の如く巻きつき、水中へ引き摺り込んでゆく。
「な…!?」
思わず再不斬を見る。鬼鮫の視線に気づいた再不斬が目を細めた。露になった口許が弧を描く。
「…ッ!確かに以前より成長したようですね」

包帯はまるで重石のように重くなってゆく。外そうにも足はどんどん沈み、正面からは再不斬の首切り包丁が迫り来る。
更には予想もしていなかった展開が鬼鮫を襲った。

「さ、鮫肌…っ!?」
なぜか己の愛刀が自身の足を狙って口を開いたのである。齧られる寸前に身を引き、事無きを得たが、もう少し遅ければ足が喰い千切られていた。

「なぜ、」
「その包帯にゃ、そいつが好みそうなチャクラをたっぷり滲み込ませてあるんだよ」
疑問は再不斬の返答にて解消される。その声に促されるように、鬼鮫の目が包帯を捉えた。


戦闘開始直前。おもむろに再不斬は素顔を晒した。鼻から首元にかけて覆っていた包帯を投げ捨てたのだ。
再不斬の素顔は物珍しかったが、鬼鮫は何の疑いも抱かなかった。
ましてや事前にチャクラをその包帯に流していたなどと。


今現在、己の足をギリギリと縛る包帯を鬼鮫は憎々しげに見下ろした。
水中に沈みゆく。それをなんとか耐え、首切り包丁をかわし、包帯を足ごと喰らおうとする鮫肌からも退避する。
己の武器を失い、ましてやその武器から狙われる鬼鮫の目に焦りの色が過った。術を使おうとしても三方向からの
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