六十一 兄と弟
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暫し耐えるように顔を伏せていたサスケは一度深く息を吸った。顔を上げる。
ようやく冷静さを取り戻し、兄の話を真剣に聞こうとし始めたサスケの態度を見て取って、ナルトは内心安堵の息をついた。
彼は今までずっと、兄弟の会話に一切口出ししなかった。他人が口出しするものじゃないと、黙って見守っていたのだ。
取りつく島も無かったサスケがやっとイタチの話を真面目に聞く態勢を整えてくれた。後は時間の問題だろう。勿論、サスケの憎しみが木ノ葉の里に向けられる可能性は大きい。
だがナルトはイタチが内心、後悔しているのを察していた。かつての仲の良い兄弟に戻りたいと願っている事も知っていた。
(…人の事を言えないな)
己の事を棚に上げて、イタチとサスケの兄弟を心配する。そんな愚かな自分自身に対し、彼は失笑した。そのまま、どこへとも知れず呼ぶ。
「黎明」
ナルトの声に応じて、どこからともかく声無き返事が返ってくる。ふっと一瞬チャクラが使えるようになったのを察し、素早く印を結んだナルトは再び声を掛けた。
今一度、チャクラを扱えぬように施した零尾に謝礼を述べ、後ろを振り返る。術を掛けられたとも知らないイタチとサスケを眼の端で確認し、ナルトは橋の欄干に背を預けた。
イタチとサスケのチャクラが使えなかった原因は零尾にある。
二人を橋の上で対面させたのも、五感の遮断及び幻術の二重結界を橋のみに展開しているのも、全ては零尾のチャクラ吸収範囲を計算した結果だ。勿論もっと広範囲にする事も可能だが、範囲が小さければ小さいほどチャクラの使用を一切許さず、また憑依されている事にも気づけない。
零尾に憑依された人間は心の闇を見透かされる。奥底に仕舞い込んだ心の傷を感じ取られる。
だがナルトが宿主になった今、零尾が憑依した人間は互いに本心を明かしやすくなるのだ。勿論サトリの一種である零尾の影響で心中を全て曝け出される為、滅多に使わないが、今回は別である。包み隠さず腹を割って話し合う事がイタチとサスケには必要だったからだ。
二人には悪いが、秘かに零尾を憑依させてもらう。尚且つチャクラを使用出来ぬ状況にし、話し合いで解決するよう促す。
そこまでお膳立てした当の本人は、既に零尾の影響から脱していた。零尾の力を以ってしてもナルトの心は読めない。
己以上に得体の知れない彼を怖ろしく思うのと同時に、零尾は己の名と居場所を与えてくれた主を崇拝していた。
零尾がそのような想いを抱えているとは露知らず、ナルトは水上の戦闘を眺めていた。
アスマ・紅と対峙している白は膠着状態。一方の再不斬は未だに鬼鮫と接戦している。白熱する争いに苦笑を零していた彼は、ふと眉を顰めた。
以前感じた、覚えのある気配に瞳を眇める。
「……潮時か…」
そ
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