六十一 兄と弟
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の仇を討たんと、復讐者として生きてきたのだ。
去り際に残したイタチの言葉通り、醜く生き延びる。生にしがみつき、ひたすらに強さを追い求めた。
イタチと同等、いやそれ以上の器になる事を望んだ。
「………嘘だ…」
憧れだった。慕っていた。自慢だった。誇らしかった。大好きだった。誰よりも。
恨んでいた。憎かった。不愉快だった。疎ましかった。大嫌いだった。誰よりも。
愛と憎しみは相半ばで、何が切っ掛けで変化するのかわからない。サスケの場合、あの夜が切っ掛けで、兄に対する認識が一転した。
培ってきた思慕や敬愛は、たちまち敵意に膨れ上がり。
溢れんばかりの憧憬は、一気に殺したいほどの憎悪に変わった。
大好きだったから。
「……嘘だ」
父を筆頭に、木ノ葉の里に対してクーデターを企んでいたうちは一族も。
その父の命令で、スパイとして里の暗部に入った兄が、実は木ノ葉がうちは一族に送り込んだ二重スパイだった事も。
里と一族を天秤に掛け、里を選んだ兄の苦渋の決断も。
一族を滅ぼした罪人として抜け忍となる事自体が任務だった事実も。
汚名を背負ったまま、里を抜け、暁という組織に入った行動も。
その生き方を選んだ兄も。
なにより。
殺したくて殺したくて堪らなかった相手が。己の生きる目的であり野望だった男が。
恨め憎めと、嘲笑った裏切り者が。
幼き自分が憧れた、優しい自慢の兄のままだったなどと。
「嘘だッ!!」
だからこそ信じられない。信じる事が出来ない。信じても、どうせまた裏切られるのだと、サスケは知らず知らず恐怖に怯えていた。
爪が食い込むのも構わず、強く握り締める。
「そんなの…、嘘に決まっている……ッ」
ようやっと絞り出した声は掠れている。肩を震わせているサスケをイタチはじっと見ていた。
刺々しくも泳いでいる弟の視線に、目を細める。
「俺はお前に…いつも「許せ」と嘘をつき続けた…。お前をずっと遠ざけてきた…」
おもむろに聞こえた声に、サスケはハッと顔を上げた。揺れる視界の中、自分と似ているようで違う写輪眼が映り込む。
忘れようにも忘れられない、鮮烈な赤。
「巻き込みたくなかったんだ……お前を」
「嘘だ…ッ!!あんたは…父さんを、母さんを…一族を…皆殺しにした!!」
言葉を遮って激昂する。サスケの当然の反論に、イタチは何も口を挟まなかった。ただ黙ってサスケを見つめている。その穏やかで静かな瞳に、サスケは気圧されたように後ずさった。
「そうだな…否定しない。俺が一族を滅ぼした。それは紛れも無い事実だ」
言い訳すらせず、むしろ肯定したイタチを、サスケは「だったら…ッ!」と睨みつけた。
「やっぱりあんたは!里を抜けた犯罪者で!憎むべき存在で!俺の……敵なんだ!!」
一言一
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