六十一 兄と弟
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ち砕いた。
九尾の妖弧襲来。
尾獣を操れる瞳力を持つ故に、木ノ葉の里に疑われた『うちは一族』は、暗部によって監視を徹底された。居住地すら里の片隅に追い遣られ、隔離さながらの状態となった彼らは、当然この現状に不満を抱く。
結果、サスケとイタチの父――フガクを始め、一族は里に対してクーデターを企んだ。
情報収集の為、優秀な忍びである息子のイタチをスパイとして木ノ葉の暗部に送り込むフガク。彼は知らなかった。その息子が既に里から命じられ、うちはの情報を流していたなどと。
二重スパイだったという事を。
同時に、イタチの優しさも心の傷にも、父は気づけなかった。
幼き頃、戦場を目の当たりにしたイタチは誰よりも戦を恐れ、何よりも平和を望んでいたのだ。だからこそ彼は、己の手でうちは一族に幕を下ろした。
うちは一族がクーデターを起こせば、それが戦の火種となる事をイタチは確信していた。内戦が起きれば、木ノ葉の里だけではなく、火の国も大きく揺れる。他国が攻め入り、新たなる忍界大戦の引き金にもなりかねない。
イタチは多くの人が死ぬ事よりも、うちは一族の抹殺を選択したのだった。
唯一、何も知らぬ弟だけは守ろうと心に誓って。
サスケ以外を殺害したイタチは木ノ葉の里を抜けた。そして里の脅威となるであろう組織を内部から見張っていたのである。
今回イタチが木ノ葉の里へ戻った理由も、弟の安全を約束した三代目火影が亡くなったと耳にしたからだ。三代目以外の木ノ葉上層部、特にダンゾウに、己が生きていると忠告するのが目的だった。サスケに手を出せば、自分の知り得る情報を漏洩すると暗に脅しているのである。
汚名を被っても猶、イタチは木ノ葉の為、そして弟の為に動いている。
真実を知らぬ木ノ葉の人間と敵対しても。最愛の弟からは激しく憎悪されようとも。
「………………」
憮然と立ち尽くす。
告げられた真実はあまりにも大きく、その衝撃はサスケから声を奪い、呼吸すらも忘れさせた。
「……大丈夫か?」
息が出来ず、過呼吸になったサスケを労わるように手を伸ばす。背中を擦ろうとしたイタチの手をサスケは弾いた。
「……触るな…ッ!!」
唸る。喘ぎながらも反発するサスケに、普段表情一つ変えないイタチの顔が僅かに歪んだ。その悲痛な面持ちを目にして、サスケは唇を噛み締める。
(……なんであんたが…そんな顔するんだよ…ッ!!)
忙しない息遣いの中、サスケは自身の手を見下ろした。自らイタチの手を振り払ったその手は、【千鳥】を使った時以上の痛みを発している気がした。
「……う、そだ…」
うちはイタチ。
うちは一族を滅ぼし、木ノ葉の里を抜けた大罪人。それが世間における彼の評価だ。
実弟であるサスケもその認識を信じていた。だから一族
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