第二部 文化祭
Asuna's episode 出会い
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「で、剣についてだけど……アスナには、?細剣?が合ってると思うんだ」
「……細剣?」
「うん。基本的にすっごい軽いやつで、名前通り細い剣」
明日奈はしばし考えてから、思い切って言った。
「……でも、わたしにはどれがその?細剣?なのか、倉庫から探し出すなんてできないわ。手伝ってくれるのよね?」
「それには及ばないな。前に人から貰った使ってないやつがあるから、それやるよ。?細剣?って、重さ重視な俺にはまったく合わないんだよね」
「……へえ」
明日奈は動揺を隠しながら、なるべく淡々とさせた声で言った。──同級生の男の子からなにかを受け取るのは、これが初めてだった。
「……き、桐ヶ谷……くん」
明日奈がか細い声で呼ぶと、和人は服についた埃をはらいながら立ち上がった。
「……あ、ありがと」
言うと、何故だか和人の顔が少し赤くなって見えた。
──熱でもあるのかしら?
明日奈は首を傾げ、彼の額に手を当てた。しかし和人は即座に明日奈の手を押し退け、上ずった声で言う。
「な、なんだよいきなり!?」
「熱でもあるのかなって思って」
「な、なんで」
「だって、なんだか……顔、赤いわよ」
和人は慌てたように右腕で顔を隠した。
和人は親切にも、?細剣?の使い方を細かく──ダジャレではない──教えてくれた。
?細剣?は?斬る?ことに長けている?片手直剣?とは違って、基本的にはフェンシングと同じ要領で?突く?ことに長けているのだという。和人の言った通り、?細剣?はすぐに明日奈に馴染んだ。
明日奈は微笑みながら、和人に言った。
「大分コツが掴めてきたかも」
「そうだな。俺が越されるのもそう遠くないな」
「……なにそれ。今のわたしじゃ、君に敵わないっていうの?」
「いや、そういう意味じゃなくて! 剣のスピードと正確さは、俺負ける気しかしないし」
「ふふ、そう?」
明日奈はくすっと笑った。
「ね、桐ヶ谷くん」
「ん?」
「君のこと、なんて呼べばいいかな?」
「え……いつも?桐ヶ谷?って呼んでるじゃないか」
「違う違う」
明日奈はこほん、と小さく咳払いすると、ずいっと和人に詰め寄った。
「わ、わたしだけ?アスナ?なんて、なんだかおかしいじゃない。桐ヶ谷くんのことも、あだ名で呼ばせてもらいたいなって、そう言ってるの」
あまりの必死さに、後半は声をあらげてしまった。
我ながら苦しい言い訳だと思う。しかし、単に和人ともっと親しくなりたかったから──なんて、言えるはずもない。
和人はぱちくりと瞬きすると、男子にしては華奢なおとがいに手をあて、悩み面で返事をした。
「……みんなには、?キリト?って呼ばれ
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