第二部 文化祭
Asuna's episode 出会い
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言って分かるかしら?」
「1年生ですか?」
「ええ、桐ヶ谷くんって子よ。彼、中庭で倒れてるあなたを見つけて……」
━━桐ヶ谷くん。
そんな苗字は珍しいので、心当たりは1人しかいない。
━━桐ヶ谷。桐ヶ谷和人。
天敵に倒れたところを見られるだなんて、恥晒しもいいところだ。明日奈は唇を噛むと、礼も言わずに黙って部屋を出ていった。
昼休み。明日奈はお弁当を食べようと、1人で屋上へ向かった。クラスメートから「一緒に食べよう」と誘われたが、そんな気分ではなかったので断ったのだ。
ここなら1人でいられると思った。しかし、かすかな寝息が聞こえる。辺りを見回すと、1人の少年が壁にもたれて寝ていた。幼い寝顔や体格から、恐らく明日奈と同じ1年生だ。
名札はつけていない。しかし明日奈は、何故だかこの少年が誰なのか瞬時に解した。
そこで、少年が目を覚ました。
「ムニャ……」
ぱちりと眼が合う。
しばらく眠そうに瞬きした少年が、突然バチッと眼を見開き、座ったままで音もなく後ずさった。
数秒の間、二人は見つめ合っていた。先に口を開いたのは、意外にも明日奈だった。
「……あなたが桐ヶ谷和人?」
「は、はい」
和人はこくこくと頷いた。
━━やっぱり。
和人は何やら考え込み始めた。そして、なにかを思い出したようにパンと手を打つ。
「君、中庭で倒れてた結城明日奈さん?」
「……そうだけど」
少しばかり不愉快に思った明日奈は、眉間に皺を寄せた。和人は言う。
「ちょっとしたおせっかいなんだけどさ、あの剣、アスナに合ってないと思うよ」
ちょっとしたおせっかいどころか、大きなお世話である。
確かに明日奈は、学園の倉庫にあった剣を適当に取って使った。しかし、この少年には関係のないことではないか。少年は続ける。
「おまえの使ってたやつは?片手直剣?。けど見たところ、おまえはスピード重視だろ? なら、もっと軽い剣の方が……」
「ねえ」
「は、はい?」
じろっと和人を見る。
「その?おまえ?ってのやめてくれない?」
「へ? ……あ、ああ……じゃあ、えーと……?貴女?? ……?狂剣士様??」
?狂剣士?とは、最近明日奈が頂戴した異名である。
最後の?狂剣士様?は、不本意にも作られた明日奈のファンクラブが発行する新聞で用いられているらしい呼称だ。何故和人がそこまで明日奈を知っているのか。明日奈がよほどの有名人ということだろうか。
明日奈は和人を強く睨んでから、ぷいっと顔をそむけて言った。
「普通に?アスナ?でいいわよ。さっきそう呼んでたでしょ」
「りょ、了解」
震え上がった和人は素直に頷き、慌てて話題を戻した。
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