暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
真っ白な紙
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
性があるにも関わらず、アレスは誰にも会わない道を歩いていた。
 おそらくはどの時間帯にどこに、どれくらいの人がいるか把握しているのだろう。

 アレスが巡回員になっている日は、抜けだすなという学校での不文律の理由がわかった気がする。
 そう考えれば、ウィリアムはアレスを軽視するあまり、失敗したのだろう。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ございません」
「ん?」
「おそらく、ウィリアム先輩は騒ぎたてると思います」

 それで自分が被害を受けるだけであれば、問題はない。
 どんな風評被害も甘んじて受けるつもりであるし、関係のないことだ。
 けれど。
「申し訳ございません」

「気にするな、後輩。別段問題はない」
 あっさりと口にした言葉が、頼もしくて、ライナはアレスの背中に顔をうずめた。
「ライナです」
「ん?」
「後輩じゃなく、ライナと呼んでください」

「ははっ」
 アレスは笑い。
「わかった、ライナ。俺のことはアレスと呼んでくれていい。こちらの事は気にするな、明日になれば全て終わっているさ」
「はい、アレス先輩」

 ライナは答えて、ゆられる暖かさに身を任せた。
 恐かった――でも、それ以上に。
 これを言えば、アレスには怒られるだろう。

 だから、ライナは心の中で、今日は最高の日だったと呟いた。
 そうして瞼を閉じたライナの耳に、しばらくして微かにアレスの呟きが聞こえる。
 誰も聞いていないと思ったのだろう、独り言のように口を開き、
「もう少し肉付きがあれば、最高だったのに」
「……」

 目を開けたライナは静かに、アレスの首に回していた腕に力を込めた。

 + + +

「で。一般人を含めて、アレス・マクワイルドに暴行を受けたと、そういうわけだな?」
 誰も使っていない小会議室。
 その一席で、アンドリュー・フォークが手にしていた教科書をつまらなそうに眺めている。
「はい。これは明らかに暴行であり、士官学校の学生としてあるまじき行為ではないかと思います」

 そう胸を張って呟く、ケビン・ウィリアムの鼻には痛々しく包帯が巻かれている。
 その姿で身振り手振りを広げて、いかにアレスが酷い行動をしていたか、自分が被害者であったかを伝えている。
「それで、君は私に何を期待するんだ?」
「何を。アレス・マクワイルドを退学させるチャンスではないでしょうか!」

「チャンス……ね?」
 言葉とともに、フォークは教科書を閉じた。
「それが起こったのは何時頃だ?」
 今まで興味のなさそうであったフォークが、初めて問いかけた言葉に、ウィリアムはほっとしたように胸をなでおろした。

「昨日の八時頃です。なんでしたら被害者をそろえることも……」
「八時か――それで、今が
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ