真っ白な紙
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性があるにも関わらず、アレスは誰にも会わない道を歩いていた。
おそらくはどの時間帯にどこに、どれくらいの人がいるか把握しているのだろう。
アレスが巡回員になっている日は、抜けだすなという学校での不文律の理由がわかった気がする。
そう考えれば、ウィリアムはアレスを軽視するあまり、失敗したのだろう。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ございません」
「ん?」
「おそらく、ウィリアム先輩は騒ぎたてると思います」
それで自分が被害を受けるだけであれば、問題はない。
どんな風評被害も甘んじて受けるつもりであるし、関係のないことだ。
けれど。
「申し訳ございません」
「気にするな、後輩。別段問題はない」
あっさりと口にした言葉が、頼もしくて、ライナはアレスの背中に顔をうずめた。
「ライナです」
「ん?」
「後輩じゃなく、ライナと呼んでください」
「ははっ」
アレスは笑い。
「わかった、ライナ。俺のことはアレスと呼んでくれていい。こちらの事は気にするな、明日になれば全て終わっているさ」
「はい、アレス先輩」
ライナは答えて、ゆられる暖かさに身を任せた。
恐かった――でも、それ以上に。
これを言えば、アレスには怒られるだろう。
だから、ライナは心の中で、今日は最高の日だったと呟いた。
そうして瞼を閉じたライナの耳に、しばらくして微かにアレスの呟きが聞こえる。
誰も聞いていないと思ったのだろう、独り言のように口を開き、
「もう少し肉付きがあれば、最高だったのに」
「……」
目を開けたライナは静かに、アレスの首に回していた腕に力を込めた。
+ + +
「で。一般人を含めて、アレス・マクワイルドに暴行を受けたと、そういうわけだな?」
誰も使っていない小会議室。
その一席で、アンドリュー・フォークが手にしていた教科書をつまらなそうに眺めている。
「はい。これは明らかに暴行であり、士官学校の学生としてあるまじき行為ではないかと思います」
そう胸を張って呟く、ケビン・ウィリアムの鼻には痛々しく包帯が巻かれている。
その姿で身振り手振りを広げて、いかにアレスが酷い行動をしていたか、自分が被害者であったかを伝えている。
「それで、君は私に何を期待するんだ?」
「何を。アレス・マクワイルドを退学させるチャンスではないでしょうか!」
「チャンス……ね?」
言葉とともに、フォークは教科書を閉じた。
「それが起こったのは何時頃だ?」
今まで興味のなさそうであったフォークが、初めて問いかけた言葉に、ウィリアムはほっとしたように胸をなでおろした。
「昨日の八時頃です。なんでしたら被害者をそろえることも……」
「八時か――それで、今が
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