第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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すが、しかしそれでも彼女は石を持つ手の力を緩めない。いっそ胸や首を打って殺してしまえとも思うが急所は守られておりどうにも出来ない。サンカの残虐な笑みが広がり、石が思い切り振り下ろされた――
「……っう、ええ……苺大福ゥ……」
蜘蛛の足がマナの体に触れた。そして包み込むようにそれらが一気に距離を狭めてくる。ぐいと、それらがマナに抱きつく。気味の悪い感触に震える暇も無かった。マナを掴んだそれは、マナを地中へ引きずり込もうとする――
「マナッ、しっかりしなさい!」
手裏剣が飛んで、蜘蛛の足を切りとばす。涙で霞んだ視界のまま見上げると、背中からダラダラと血を流すテンテンが目に入った。その手に握ったクナイはサンカの首に当てられている。
どうやらテンテンはサンカと紅丸の間に割って入って紅丸への攻撃を食い止めたのだと、そうとわかってマナは呆然と立ちすくんだ。足はもう踝のあたりまで沈んでいる。
「――テンテン先輩っ」
叫んで手を伸ばして必死に彼女に近づこうとするのに、足はずぶずぶと沈んでゆく。届かない。どうしよう。届かない。サンカがテンテンを蹴り飛ばす。血の跡をずるっと残して、テンテンは地面に転がった。それきりピクリとも動かない。
「――うわああああああ!!」
情けない悲鳴をあげて、マナは狂ったかのようにもがきだすも、足は膝まで沈んでいく。
「ワンッ」
紅丸が飛んできた。手を噛み付かれる。
ああそうだよ自分は最低な主人だ。
自分の忍犬が殺されそうになっているのに蜘蛛の足に囚われて泣くことしか出来なくて、今度は自分の忍犬を守ってくれた先輩を呆然と見ることしか出来なくて?
最低だ。
そんな自分の情けなさに、涙が溢れて止まらない。
「ごめんなさいぃ……っ」
太腿まで沈んでいく。いっそこのまま沈んでしまえ。生き埋めになってしまえ。
「ワンッ! ワン、ワンッ」
紅丸が叫ぶ。
その体を左手で撫でた。その瞬間、キバの声が脳裏で響く。
――獣人分身ってのは、忍犬に自分のチャクラを与えて――
最後の望みだ、と、そう思って。
紅丸を撫でる左手に、チャクラを集める。
「ワンッ」
腰まで沈んだ。目の前に現れたもう一人のマナが微笑む。地面を蹴って飛び上がったマナの姿をした紅丸がいたところにサンカの拳が命中する。倒れたテンテンを抱え上げて、そのマナが唸る。
「――苺大福」
腹まで沈む。このまま沈んでいるわけにはいかない、と思い至ってマナは笑った。
「うおおおおおおッ!」
蜘蛛の足を素手でもぎ取り、無理矢理体を引っこ抜く。それを構えてサンカとミソラに向き直った、その瞬間――
〈落ちぶれたな、妖ども。こんな人間なぞにお
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