第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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食べ物を前にして餓死した無念から生まれた犬神。
何故自分がという理不尽を抱えながら病死した人の思いから生まれた疫鬼。
そして貪欲な思いから霊となった狐者異。
犬神と疫鬼はいいとして(ユヅルにはよくないのかもしれないが)、貪欲さのあまりに生まれた妖の血を継ぐというのはあまり気持ちのいいことではなかった。そんなマナの心の内を見透かしたかのようなネジの言葉に一瞬びくりとする。
「それ、から、げほっ、一週間で、げほっ、父は、」
――死んだ。
父はもしかしたら、近い内に宗家によって殺され、宗主ヒアシの影武者として雲へ差し出されることを悟っていたのではあるまいか。だからこそあのようなことを言ったのではないのだろうか。
今となってはそれを知る術は何もないし、そうという根拠もない。ただ偶々言ってみただけなのかもしれない。それを言って自分に何を伝えたかったのかはわからない。自分が霊となって化けてきても恨むなとでも言いたかったのだろうか。
それでもいいと思った。霊としてでも出てきてくれるなら。
もう一度会えるなら、それでもいいと。
咳きこみつつも物思いに耽り始めたネジに、他の数人もまた各自の思いに耽り始め、再び森は沈黙に沈む。
+
「経絡系……ですか?」
「ええ。内臓に損傷は見えませんが、経絡系がズタズタなんです。通常、内臓に絡んでいる経絡系を傷付けられることは内臓も共に傷付けられていることを意味しています、点穴をつかれたわけじゃないならね。それがこの子は経絡系“のみ”を傷付けられている。しかし点穴がつかれた様子はない。……一体どんな特殊な術を使われたんですか、そしてもし彼に特殊な体質があるのなら教えてもらいたいもんですね」
日向の出身であろう、真白い目の医療忍者がじろりとこちらを睨んできた。
ユヅルのことを思って犬神持ちのことは話していなかったが、こうなると否が応でも話さなければならないだろう。溜息をついて事情を説明しようと口を開くと、「彼は犬神持ちなんです」、その一言だけでその医療忍者はなるほどと納得した。
犬神についての説明が必要ではないかという懸念は吹っ飛び、困りましたねと日向の医療忍者は呟く。
「犬神と犬神持ちは経絡系を共有しているんですよ。犬神が出てきて戦闘すると、実体のない犬神は経絡系を骨とし幻を皮としたようなもの……つまり犬神が負傷しても傷つくのは経絡系だけです。ならば納得がいきますね、この子の犬神はこの子のかわりに戦闘したんでしょう? ――なんということだ、こういうのは一番危険なんですよ。経絡系に受けた傷がそのまま本人に還元されますからね。影分身のように消えておわりということもない」
長広舌を振るいつつ、彼が溜息をつく。長い茶髪が僅かに揺れた。
「まあ、もう少し
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