第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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尽かもしれない、こちらだって相手を傷付けた。でもそれが何だというのだろう。それはマナの知ったことではない。自分勝手かもしれない、自分の仲間が傷付けられれば憤り相手を傷付けたのならどうでもいい、というのは。それでも忍びの世界も妖の世界も、正論で組み立てられてはいないのだ。
笑尾喇がさっさとユヅルの中に戻らないことにも腹が立った。確かに笑尾喇は強いが、その体がユヅルを傷付けていることを知らないのだろうか。それとも笑尾喇にとってユヅルなどとるに足らない存在なのだろうか。
どうせこの世界は正論では出来ていない。マナは食べることしか知らないような人間だ。はじめがいつか言っていたように、マナは食べることに純粋な人間で、そして食べるためならば無銭飲食だって拾い食いだってなんども出来る。正論なんて通用しない、マナは屁理屈しかいえない。でもそれでいい、サスケが言っていたように、マナはウスラトンカチなのだ。
「テメエら覚悟しやがれ!」
ワイヤーを結びつけたクナイを握り、マナは地面を蹴って駆け出した。
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「食遁使い、ねぇ……。薬遁に進化してから出直してきたら?」
そんな風にマナを挑発したのは病遁使いである疫鬼のカイナだった。猫っ毛のセミロングをした彼の挑発にうるせえと返してマナはワイヤーを結びつけたクナイを握り締めてぐぐぐと引っ張る。薬遁と言うのはでっちあげだ。こんなものの使い手がいたとしたらカイナは真っ先にそいつを殺しにいく。薬遁使いなんぞが出てきたら強力な商売敵になる。告げられた相手を病に罹らせるという商売をしているカイナにとってそれはなんとしてでも駆除してしまいたい存在だ。
「食遁!」
「懲りずに食遁? 食中毒にならないように気をつけなね」
カイナたち妖隠れの生まれのものの中にはもはや妖隠れという認識がないものもいる。今や岩隠れと同化した妖隠れの里が滅びたのはずっと昔だ。カイナは岩隠れの忍として生まれ育ってきた。気付いた時には岩隠れの里の中で、孤児としてたった一人そこにいたのだ。孤児院を抜け出したカイナはことあるごとにこの能力を使用して食べ物などを掻っ攫っていたが、その内商売をするということに思いついた。以来、この能力は概ね商売に用いている。価格によって病の重さを換えるというこの仕事はカイナによく似合っていた。対象にたったの一触れするだけでいいのだ。相手が薬を飲んでよくなると再び頼まれたりするので常連なんぞもいるし、お陰で誰は誰が嫌いとかそうした情報網なら誰にだって負けない。
ただカイナと違い人の忍びとしての生活になれない妖や、妖であることに誇りを持つものもいる。ケイやサンカ、カイがその例だ。カイの食物は基本的には死肉だし、桂男のケイは時間へ対する感覚が違い、サンカは華奢でありながら怪力だ。ミソラのようなも
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