第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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の足が霧散する。次いで襲ってきた腐ったクナイや手裏剣を折りたたんだ扇子で弾き飛ばし、一歩二歩と能楽者のような足つきで華麗に前に歩みを進めた後に空へと飛び上がり、ぱしっと扇子でカイナを弾き飛ばした。そして足でミソラとを弾き、サンカの投げた石の前に扇子を構えて念じるだけで石を空中停止させる。さらに扇子を振り下ろすと、石ころは地面に落ちた。
ケイが手招きをする。馬鹿の一つ憶えか、と笑尾喇は呟いた。
〈桂男のケイ、貴様は何もかわっとらんな。お前はわれが生まれて間もないころから月に泳がず地を這い手招きばかりして、一体誰を招く気だ?〉
「……おぼえていた……のか、笑尾喇」
「何よアンタ、この犬と知り合いなの!?」
「……少し前に、友達に……なった」
〈お前は月より墜ちたのだ〉
ゆったりとした口調で喋るケイに、サンカが食ってかかる。月より墜ちた、と笑尾喇は繰り返す。月より墜ちて、そして二度と月へ舞い戻ろうとはしなかったのだ。兎が餅をつき、嫦蛾やかぐや姫や天女たちが舞う月の世を。手招くだけで人の寿命を奪う力を失い、幻しか見せられないようになっても。
それでもケイが選んだのは月でなく地だ。
「……ここが……好きなんだ。……月より、きれい」
ケイが微笑む。弱弱しく漂うような笑みではない。にっこりと微笑んでいる。虚ろな瞳にきらきらと明るい光が生まれる。
「……もう一度……戦おう、笑尾喇」
〈受けて立とう〉
笑尾喇が優美な仕草で扇子を振るう。ケイはクナイを握った手を緩やかに振った。
そして途端二人が加速した。扇子とクナイがぶつかりあい、ケイの片手が笑尾喇の鳩尾をつく。それを扇子で掬い上げるように跳ね上げ、一歩進んでケイの懐に踏み込む。
激しい咳きをしながら、ネジはそんな二人の戦いに見入るカイナを見た。やるなら今の内だ、と自分に言い聞かせる。そしてこれが出来るのはもう彼の手に“罹った”自分だけだ。白眼でカイナの懐に入った巻き物に見つけるなり、チャクラを纏わせた掌を喰らわせた。うわっ、と驚いた声をあげてカイナが地面に転がる。それを追って飛び上がり、すかさずクナイでその衣服を裂くと、巻き物が出てきた。それを手にして、叫ぶ。
「受け取れ、マナ!」
「っ!」
投げ飛ばした巻き物は見事マナの両手の内に収まった。やばい、という顔をしてサンカが石を投げつけるが、それを意識を取り戻したリーが援護する。他の妖からも攻撃が飛んだが、リー、ガイ、はじめ、ハッカの援護も加わり、マナは巻き物の軸を抜き取って投げ捨てた。ぐしゃっと巻き物を握り締め、そして――
口の中にねじ込んだ。
くしゃくしゃと音を立てて咀嚼する。ごくん、とマナがそれを飲み込むのを、妖も忍びも驚いた顔で見つめていた。
マナの体から炎の
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