第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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見させるだけで、月を見せてやれるのだ。月の向こうにある死を。
不意にぐいと、引っ張られた。何があったんだと思った瞬間、胸元あたりに誰かの腕が触れる。カイナだ。ということは――
「げほっ、はじめ、くしゅんっ、お前はげほがふっ、俺にぐしゅんっ、恨みでもあるのがほっ、かげほっ!?」
咳きとくしゃみを交えた声で怒鳴ると、はじめは数秒おろおろしてから、
「……せ、先輩には免疫が……」
「あるわけないだろっ!」
ネジの渾身の柔拳を受けたはじめの体が宙を飛び、地面に這い蹲ってネジが咳き込みだす。
その瞬間、誰かの声が聞えた。
〈落ちぶれたな、妖ども。こんな人間なぞにおされているとは〉
振り返ると、そこにはユヅルが立っている。
左胸から獣のような何かが吹き出ている。咳き込みながらネジはそれを見つめた。
あれは。あの獣は。
まさか――
+
「あの妖――お前の召喚したものか?」
「ああ。子供とは言えそれなりに力はある」
いや、大人より子供のほうが手懐けやすいんだろう。そんな言葉を飲み込んで、ガイは蓮助にアッパーを食らわす。それを左手で食い止め、蓮助が右手で殴りかかってきた。腕を軽く動かして蓮助の腕を掴み、一本背負いで投げ飛ばす。蓮助は投げ飛ばされた空中で体勢を整え、右足で着地すると同時に左足でガイを蹴っ飛ばした。蹴り飛ばされたガイも直ぐに体勢を整え、木の葉旋風を放つ。一段目こそ避けられたものの、二段目で蓮助は見事に吹っ飛ばされた。吹っ飛ぶ蓮助にすかさずダイナミック・エントリーで真正面からのとび蹴りを放つが、蓮助が咄嗟に印を結ぶ。一本の丸太がばっ、と地面にぶつかった。
「変わり身の術、か」
「おや。そう言えば五大国では変わり身だったな。俺たちの国では空蝉と呼ぶ」
「お前たちの国――?」
「かつて滅びし鬼の国。鬼影が統べる、妖隠れの里」
聞いたことがあるな、と呟いてガイは手刀を叩き込んだ。ぐは、と呻き声をもらして蓮助がよろめいたかと思いきや、左足を軸にして思い切り右足を回転させてガイを蹴ろうとする。その右足を掴み、蓮助を投げ飛ばすが、彼は岩壁を蹴って方向転換し、構えたクナイを一斉に投げてくる。一瞬、彼と目があった、瞬間。
「――!?」
短髪の女の子がぴょんぴょん飛び跳ねていた。黒い髪をポニーテールにした少年が静かに読書し、緑の全身タイツを着たリーによく似た――いや、リーのよく似た――少年が真っ白い歯をきらきらさせて笑っている。長い黒髪を中わけにした童顔の女の人がこちらを見ていた。
幻術だ、そう思った瞬間場面が切り替わる。
――先生! 先生!!――
拷問されて死んだ女の死体。ガイの担当上忍だった女性が、御座敷童子が、そこで
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