episodeT 始まりの日?
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――高校生での一人暮らしとは如何なものか。
この生活を初めて一年近く経つというのに、未だに現状の生活環境に時折違和感を覚える俺は誰に問うでもなく、胸中でそんな疑問の言葉を思い浮かべた。それと同時に自分の集中力が切れている事も自覚した。余計な思考を巡らしているのが何よりの証拠だ。先ほどから定期考査準備のために進めるべき問題集の内容が欠片も頭に入ってこない。一か月ほど先に予定されている学期末考査である今回のテストで情けない点数を叩き出してしまうと、クリスマスや正月と楽しみな行事目白押しな冬休みを強制的補講フルコースという地獄へと塗り替えられてしまうので要注意なのだが、まぁさすがに赤点取るほど不真面目な生徒ではないし、元々今日一日勉強に集中できるなんて考えていなかったので問題はない。あるとすれば彼女のいない身としてはどの行事も男友達と悲しく楽しむしかない点か。
新品同然の――事実として購入してから一年しか使っていないのだが――勉強机から顔を上げ、俺は首を鳴らしながら背もたれに深く体重を預けた。照明の光が目を射る。
黙考することしばし――結論を導き出す。
「やはりこんな日に勉強は無理だ。飯だな」
前半と後半の繋がりがないように見えるかもしれないが、実はこの二つは『だからゆえに』で繋げても問題ないほど密接な関係を保持している。
なぜなら今日一日俺から勉強意欲を奪い去っている原因は昼食を早々に食べ終えた時間から始まるのだ。万事準備完了で望むべきだ。持て余した時間に朝食を取り終え、十分にエネルギーを消化し終えた体で待ちわびた――ゲームに興じる。
「うん……自分で言うのもあれだが、日曜の昼からゲームの為に準備万端とは色々駄目だな……」
これでは重度のネットゲーマーと大差ない。
問題集を本棚に押し込んだ俺は自室から出て、リビングへと向かった。正直日曜日だからと十時過ぎに起床してから朝食を補給した肉体は空腹を訴えていないのだが、よもやフルダイブ型のゲームに満腹状態でログインする訳にもいかない。
詳しいことを知らないせいで余計に怖いのだが、肉体への感覚――具体的には体性神経系が全てキャンセルされた状態だと排泄物などはどうなるのか? という深淵なる恐怖の疑問が脳裏に浮かぶ。
飯食べる前に確実に食欲を削ぐようなトピックスだと思うが、実に気になる。
あのゲームを無事に購入してから何度も繰り返してきたことだ。なぜならトイレに行きたいなどという欲求は腹に食料を溜めこめば必然と起こるものであり、そこに自身の欲求は関係ない。自分の意思でトイレに向かうのもある側面としては事実だが、それは自分で望んだ行動というより、カタストロフを防ぐためトイレに向かう選択肢が最良であるがゆえに消去法で選んでいると考えられる。それにこんな恐ろ
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