第1部:学祭前
第3話『前兆』
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だよね」
「まあ俺、楽器を弾いたことないですし・・・」言いかけてから、冗談半分に話してみた。「あえていうなら、小学校の修学旅行の時に吹いたホラ貝ぐらいかねえ、ははは・・・。もしそれでも良ければ入部したいけど……」
「是非とも入部してほしいです! そしてホラ貝とカスタネットで、ぜひとも合奏したいですね! あははは!」
カラカラ笑って唯は答えた。
「あ、いや、冗談で言ったんだって……」
いちおう誠も笑い返す。
ホラ貝とカスタネットって合うのかわからないし、そもそもそんな軽音楽があるわけないし、突込みどころが多すぎる。
独特の感性の持ち主なんだな。
でも、心を洗うような笑い声、自分と話すときのキラキラした瞳。
俺のそばにいてほしい。
一瞬そんな思いがよぎり、誠はあわててかき消した。
「ふう、旨かった」
誠はコロンビアを飲み干し、自分の荷物を取ろうとする。
唯は時計を見た。 1時間しかたっていない。
もう少し、話したい。
「も、もう少し楽しみませんか……? ほ、ほら……ケーキもあるし。 このチーズケーキ、以前妹と食べたんですけど、旨いんですよ」
「そうですか?」
「そ、それにほら、もうすぐピアノコンサートもあるし。是非とも聴いた方がいいと思いますよ。」
思わず焦ってしまう。
「じゃ……じゃあ頼もうかなあ。」
誠は思わずうなずいてしまう。
母の帰りも遅いし、まあいいだろう。
「やった!!」
唯は思わず立ち上がり、机をけり上げる。
カランコロンとティーカップが揺れ、珈琲の残りの分がこぼれる。
「あ、しまった」
唯が手を出す前に、誠がティッシュでコーヒーを拭いてくれた。
「ご、ごめんなさい……」
「いえいえ」
優しく誠は微笑む。
唯もつられて、笑い返す。
やがてピアニストがやって来て、ピアノのコンサートを始めた。
「おお、綺麗な曲……」
入口近くのテーブルの席で、ピアノの音に耳を傾けながら澪はつぶやく。
この席と、唯と誠の席の間には大きな花瓶があり、お互いに見えにくくなっている。耳を傾けながらも、少し背伸びをして、唯と誠の様子をのぞき見る。
結構、和気あいあいと話しているようだ……。
どちらかというと、唯が自分から話して、誠がニコニコしながら聞いている構図になっている。
まあ、女性って男性よりも口が達者で、話のネタを結構多く作るものだからな。
「唯…………」
ちょっとうらやましく感じた澪である。
改めて誠の顔を見ると、再びドキドキがぶり返した。
コンサートが終わると、もう夜の8時になっていた。
「うわあ、うまかったあ……」誠は、冗談半分に行ってみる。「二つの意味でうまかった」
「くすくす。よかったあ、ケーキも気
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ