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Cross Ballade
第1部:学祭前
第3話『前兆』
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だよね」
「まあ俺、楽器を弾いたことないですし・・・」言いかけてから、冗談半分に話してみた。「あえていうなら、小学校の修学旅行の時に吹いたホラ貝ぐらいかねえ、ははは・・・。もしそれでも良ければ入部したいけど……」
「是非とも入部してほしいです! そしてホラ貝とカスタネットで、ぜひとも合奏したいですね! あははは!」
 カラカラ笑って唯は答えた。
「あ、いや、冗談で言ったんだって……」
 いちおう誠も笑い返す。
 ホラ貝とカスタネットって合うのかわからないし、そもそもそんな軽音楽があるわけないし、突込みどころが多すぎる。
 独特の感性の持ち主なんだな。
 でも、心を洗うような笑い声、自分と話すときのキラキラした瞳。
 俺のそばにいてほしい。
 一瞬そんな思いがよぎり、誠はあわててかき消した。


「ふう、旨かった」
 誠はコロンビアを飲み干し、自分の荷物を取ろうとする。
 唯は時計を見た。 1時間しかたっていない。
 もう少し、話したい。
「も、もう少し楽しみませんか……? ほ、ほら……ケーキもあるし。 このチーズケーキ、以前妹と食べたんですけど、旨いんですよ」
「そうですか?」
「そ、それにほら、もうすぐピアノコンサートもあるし。是非とも聴いた方がいいと思いますよ。」
 思わず焦ってしまう。
「じゃ……じゃあ頼もうかなあ。」
 誠は思わずうなずいてしまう。
 母の帰りも遅いし、まあいいだろう。
「やった!!」
 唯は思わず立ち上がり、机をけり上げる。
 カランコロンとティーカップが揺れ、珈琲の残りの分がこぼれる。
「あ、しまった」
 唯が手を出す前に、誠がティッシュでコーヒーを拭いてくれた。
「ご、ごめんなさい……」
「いえいえ」
 優しく誠は微笑む。
 唯もつられて、笑い返す。
 やがてピアニストがやって来て、ピアノのコンサートを始めた。


「おお、綺麗な曲……」
 入口近くのテーブルの席で、ピアノの音に耳を傾けながら澪はつぶやく。
 この席と、唯と誠の席の間には大きな花瓶があり、お互いに見えにくくなっている。耳を傾けながらも、少し背伸びをして、唯と誠の様子をのぞき見る。
 結構、和気あいあいと話しているようだ……。
 どちらかというと、唯が自分から話して、誠がニコニコしながら聞いている構図になっている。
 まあ、女性って男性よりも口が達者で、話のネタを結構多く作るものだからな。
「唯…………」
 ちょっとうらやましく感じた澪である。
 改めて誠の顔を見ると、再びドキドキがぶり返した。


 コンサートが終わると、もう夜の8時になっていた。
「うわあ、うまかったあ……」誠は、冗談半分に行ってみる。「二つの意味でうまかった」
「くすくす。よかったあ、ケーキも気
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