第五十一話〜暗躍と契約〜
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の言葉でゼストの脳裏にかつての部下の顔が脳裏に浮かぶ。そして血を吐くようにゼストは言葉を吐き出す。
「犠牲なら――払った!」
「それは結果的に犠牲になっただけだ。本当にその言葉を実現させたいのであれば、他人を犠牲にすることを受け入れろ。その覚悟を持て。それが最低条件だ」
ライの言葉にゼストは歯噛みし、膝をつく。手に持っていた筈の槍もいつの間にか地面に落ちていた。
彼は俯き、少しの間沈黙が訪れる。再び、顔を上げた彼は掠れるような声でライに尋ねる。
「君は俺を犠牲にするのか?」
「はい」
先程までの雰囲気が嘘のように、ライは真摯にゼストの問いに返事を返す。
「君は自分を犠牲にするのか?」
「はい」
「君は何を望んでいる?」
「ただ、自分が望んだ世界を」
「それは平和な世界なのか?」
「そこまでできる程の力は僕にはない」
その返答に眉を顰めるゼスト。だが、次の言葉でゼストの顔から迷いが消えた。
「だが、少なくとも誰かが誰かの為に優しくなれる。そんな世界を僕は望みます。そしてそれを維持するためにも僕は生き続けます。たとえ苦しくても、死にたくなっても死なない。それが自分にとっての犠牲です」
それはライにとっては、ゼロレクイエムよりも過酷な決断であった。世界の悪意を全て背負い、死ぬことによって作った平和。それをせずとも自らが生き続ける上で、その世界を作り続けるとライは自分に誓ったのだから。
「……そうか――そうか」
ゼストは静かに口を開き、納得の意を示す言葉を吐く。一度目を瞑り何かを想うようにした後、ゼストは静かにライとの契約の言葉を口にした。
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