第15話「京都―決戦@」
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か、アニキ」
「タケルさん、今日は最後まで手伝ってくれるって言ったのに」
その言葉にハッとしたのはアスナ。カモはいまだに良くわかっていないのか、やはり首をかしげている。
電車に揺られ、線路を走る振動と音が体に心地よく響く。通り過ぎる景色は彼等には見慣れない京都のものだが、自然と街が見事に融和しているその古来からの日本文化は、まるでここが故郷だと錯覚させるほどに見る者達の心を落ち着かせる。
わざわざ修学旅行で来るには確かに一見の価値があるといえるのかもしれない。
僅かな沈黙の後、ネギは言葉を続けた。
「僕はやっぱりタケルさんに嫌われているんでしょうか。昨日の奈良見学だって用事なんかあるはずないのに『用事がある』って、一緒に回ってくれなかったですし」
その言葉に、カモもやっと理解した。
要するに、タケルが途中でいなくなってしまったことがショックだったのだ。普段はほとんど見守っているような人が、しかも自分から手伝うと言ってくれた。彼を慕い、尊敬しているネギには飛び上がれるほどに嬉しかったのかもしれない。
普段から、寝るときになればタケルの話を興奮気味に聞かされているアスナにはそんなネギの気持ちが痛いほどに伝わってくる。
――……しょうがないなぁ。
車両内に人がほとんどいないことを確認したアスナが微かに頬を染め、一人で頷く。
腕を広げ、そっと優しくネギを包み込む。
「……アスナさん?」
「先輩はね、アンタのことを嫌いになったりしないわよ」
「……でも――」
「多分ね、先輩は本当に用事があるんだと思う」
だが、そんな言葉をいくらお人よしなネギでも信じられるはずもない。悲しそうに顔を伏せた10歳の先生に、アスナはため息をついて、言う。
「タケル先輩ってね、誰にも心配かけたくないのよ」
彼女が思い出しているのは偶然にも風呂場で見た、おびただしいほどの傷。ソレが用事のせいで出来たものなのだろうことは先程のタケルの動きや刹那に見せた顔で、なんとなく理解していた。恐らくは刹那も気付いただろう。
普段からネギを見守って手を貸そうとしないのは、タケルがいつでもいるとは限らないから。それこそが彼の優しさだろうから。
用事だといって誤魔化すのは、危険なことにネギを巻き込むわけにはいかないから。それこそが彼の本当の思いだろうから。
少なくともアスナにとってはそう思えた。そんな彼女だからこそ、伝える。
「アンタはタケル先輩のそんな優しさ、わかってるんじゃないの? そんな下らない嘘をつくような人じゃないって本当はわかってるんでしょ?」
どこかぶっきらぼうだが、温かい声がネギの耳に響く。
「……」
アスナの胸の中、ネギはそ
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