第百四十三話 一乗谷攻めその十二
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「倒す、そうする」
「術も破られますか」
「必ずな」
「そうした術は天下をまとめるものではありませぬ」
「乱すものじゃな」
「そうです、天下を定めるには正しきものでなければなりませぬ」
そうした妖術や黒魔術、呪いでは天下を乱すだけだというのだ、蒲生もまた信長と同じ考えであった。
それで話をしてだ、そしてだった。
「ですから若しこの度も」
「久政殿の周りにそうした術を使う者がおればか」
「必ず除かねば」
「それからですな」
「あの御仁も本意ではない」
読み切っている、確信しての言葉だった。
「そうなればな」
「二人の妖僧にこそありますな」
「坊主と言っても様々じゃな」
蒲生に彼の先程の言葉を返してみせた。
「そうじゃな」
「はい、確かに」
「高徳の僧侶もいればな」
そしてだというのだ。
「生臭で済めばいい様な、な」
「妖僧もいますか」
「生臭の俗世にまみれた坊主は懲らしめればよい」
信長は彼等についてはこう考えていた、所詮は小者に過ぎないというのだ、そうした僧侶は。
「学問から逃れているだけの奴なぞどうということはない、じゃが左道を学ぶならば」
「より厄介というのですな」
「そういうことじゃ、そしてじゃ」
信長はさらに言っていく。
「そうした僧侶は国も脅かす、戦と比べても遜色ない害を為すならば」
「そう者をですか」
「殿は」
「斬る」
一言であった、今の言葉は。
「そうする」
「では我等も」
「そうした者達を」
「では小谷城に参ろうぞ」
信長は前を見て川尻と蒲生に告げた。
「そして浅井との戦を終わらせるぞ」
「はい、わかりました」
「ではいざ近江に」
二人も応えそうしてだった。
朝倉家を降した織田家は今度は近江の浅井との最後の戦に赴いた、その時闇の中では。
またあの者達が集っていた、そのうえで彼等の中だけで話をしていた。
闇の真ん中から老人の声が問うてきていた、その声はというと。
「では浅井久政はじゃな」
「はい、万全です」
「あの術によって」
「そうか、ならよい」
それならばとだ、老人の声は闇から聞こえてきた二人の声に満足して頷いた。
「そのまま続けよ」
「やはりあれは違いますな」
一人がここでこう言った、その闇の中で。
「髑髏は」
「あれじゃな」
「はい、黄金の髑髏の術は」
「あれはまた特別じゃ」
闇の中から別の声が言って来た。
「またな」
「そうですか、それでは」
「これからも」
「あれを使え」
黄金の髑髏、それをだというのだ。
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