第百四十三話 一乗谷攻めその十一
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「若し久政殿に何か妖しいものがあればすぐに見抜きます」
「ではな、御主も来い」
「それでは」
「無論わしも見る」
彼も久政を攻める、まさにその時にだった。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「見極めよう、しかし世の中どうもな」
「妖しい者も多いですな」
「そうじゃな、まことにな」
こう川尻に言うのだった、そして。
蒲生にもだ、こう言った。
「それで御主は妖術の類は」
「これまで特に思うことはありませんでしたが」
だが今は、というのだ。
「南蛮の術で気になるものがありました」
「魔術とかいうものじゃな」
「はい、特に黒魔術ですが」
「どうやら本朝で言う左道じゃな」
「そうしたものかと」
「かなり性質の悪い術じゃな」
信長もその話を聞いている、そして実際にだというのだ。
「あれは」
「はい、それと妖術がどうも」
「似ておるか」
「南蛮のその黒魔術は生贄を使います」
「それではまさに妖術じゃな」
信長はそのことも聞いてすぐにこう思いそれを言葉に出した。
「生贄を使うとはな」
「そうです、本朝や異朝の左道と変わらぬ人の命を弄ぶものや呪うものもあり」
「そうした術を使う者達も本朝に入っておるやも知れんか」
「人は様々です」
蒲生はここではこう信長に答えた。
「どの国にも善き者もいれば悪しき者もいる故」
「そうじゃな、本朝に来ている場合もあるな」
「そうかと」
「しかし。呪いは何処でもあるか」
信長は南蛮の魔術の中でも特にそのことが気になった。
「何処でもな」
「はい、特に人の恨みを使ったものが特に危ういです」
「蠱毒か」
「あれもかなりおぞましいかと」
「鬼若が言っておったな、土佐にはあの犬神の蠱毒があったな」
「あれですか」
「うむ、あれじゃ」
まさにその蠱毒だというのだ。
「あれを使う者がおるとか」
「犬の首から下を埋めそのすぐ前に餌を置いて三日三晩餓えさせてから後ろから首を刎ねてから行うものでしたな」
蒲生はこのことも知っていた、彼は武勇や兵法だけでなく学問も秀でているのだ。
それでだ、その蠱毒についても言うのだ。
「あれが土佐に多いとはそれがしも聞いております」
「思うがそれを人にすればどうか」
「さらにおぞましいものになるかと」
犬に対して行うよりもだというのだ。
「それこそ」
「そうした術がなければよいな」
「はい、確かに」
「わしはそうした術は好まぬ」
信長はそうした術について学んだことはない、それを身に着けて天下が取れるとは思っていないからだ。
それでだ、こう言ったのである。
「左道はあくまで左道じゃからな」
「学ばれぬと」
「今後もな。しかしそれを使う者がわしの前に出れば」
そして敵ならばと
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