第百四十三話 一乗谷攻めその七
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「あの者にな」
「朝倉の重臣だった者ですな」
「うむ、本来は権六達を起きたいが」
だが、だというのだ。
「どうもな」
「越前に何かありますか」
「朝倉家の者はまだまだ当家への反発が多いじゃろう、だからな」
柴田達を転封させてそのうえで治めさせようと考えてもだというのだ、越前が朝倉の勢力が強くしかも彼等が織田家への反発が強いことを考えてだった。
「落ち着くまではな」
「前波殿達に任せて」
「それからじゃ、地ならしをしてからにする」
「畏まりました」
「何はともあれ越前は終わった」
義景達のことも治めることもだ。
「後は宗滴殿に薬を届けよ」
「あの方にですか」
「無理をして起きられてあれだけ戦われたのじゃ」
しかもかなりの高齢だ、そうしたことを考えるとだった。
「身体に無理が出るであろう」
「ではあの方は」
「最早長くないであろう」
こう考えてのことだった。
「だからここはな」
「はい、さすれば」
滝川も信長の言葉に応える、そしてだった。
信長は一乗谷城に数日留まりそうしたことを決めて命じてから織田家の兵を率いて近江に戻った、越前は前波達が治めることになった。
宗滴は病の床で一部始終を聞いた、彼は何とかベッドから起き上がり信長から貰った薬を口にした、そのうえで言うのだった。
「無念よのう」
「朝倉家が滅んだことがですか」
「それがですか」
「うむ、誰も死んではおらんが」
家の者達はだ、それは誰もだった。
だがそれでもだった、越前を預かる朝倉氏はというと。
「最早越前は朝倉家のものではなくなったからな」
「そのことがですか」
「うむ、無念じゃ」
こう目を綴じ唇を噛み締めて言う、そして。
無念はまだあった、宗滴はこうも言うのだった。
「そして義景様もな」
「あの方ですか」
「それでは」
「そうじゃ、逃げて捕まってな」
そしてだった、宗滴は無念の顔で述べていく。
「腹も切れず仏門に入られたか」
「もう既に剃髪されたかと」
「せめて捕まらず果敢に戦っていればな」
そのうえで討ち死にしていてもだというのだ。
「朝倉家の芽は残った」
「そして芽からですか」
「何かなったやも知れぬ、じゃが」
「それでもですか」
「あの有様ではですか」
「どうにもならぬ」
最後の戦から逃げてそのうえで捕まり切腹か仏門かと言われ仏門に入った、それでは到底だというのだ。
「だからな」
「それでは」
「最早当家は」
「織田家の家臣として残るであろうが」
そうした意味で家は残る、だがだった。
「嫡流は仏門に入られた、越前の主としてはな」
「終わりましたか」
「最早何もならぬ」
そうなってしまったというのだ。
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