デートの誘い
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ちらは抵抗しただけだ。そちらの方が人数が多いし、武器までもっている。どんな言いわけをするつもりだ」
「それを……何と説明するのです。学年主席のライナ・フェアラートが男達に襲われたのを助けたと。美談ですけど、素敵な噂が流れそうですね」
噂というのは実に勝手に、楽しく作られるものだ。
例えそういう事実がなくても、ライナが男達に襲われたということは、尾ひれがついて流れるだろう。
言外に口にするなという言葉に、ライナはウィリアムを睨んだ。
「別にどんな噂が流れようが、私には関係のないことです」
「そう言っていますが、先輩はどう思います? 軍人としてそんな噂が流れた人間がどうなるか」
問いかける言葉に対して、アレスは息を吐いた。
「そもそも噂とか誰を殴ったとか、そんな事はどうでもいいことだ」
捻る腕にさらに力を込めながら、アレスは口にする。
前に進めば、痛いと叫びながら、男が一緒についてくる。
「ただ問題なのは、抵抗も出来ない人間に、襲いかかる屑が士官学校にいるという事実だ。いや、正確にはいたということか」
「何をおっしゃってるかわかりませんが」
「お前が理解する必要はない」
歩き始めるアレスに、ウィリアムは苦い表情を浮かべる。
想像とは違う展開を苦々しげに思い、銃を向けた。
「それ以上近寄らないでください」
「近寄らなけりゃ、殴れないだろう?」
「くっ!」
一条の閃光は、しかし、アレスが盾にした男によって遮られた。
潰れたような悲鳴で泡を吐く男を盾にしながら、アレスは一気に走りだす。
乱発する光によって、男の身体が何度も震えるが、アレスには届かない。
既に男は意識を失っているが、それでもなおアレスは男を持ちあげて走る。
「おいおい。あんまり打ち過ぎると幾ら非殺傷でも、この名前の知らない仲間思いの男が死んじまうぞ?」
盾にしながら平然と口にして、アレスは男を投げた。
男の身体をまともに受けて、ウィリアムが後ろに下がる。
慌てて銃を構えなおそうとした、その手がアレスの手に握られた。
「一般人じゃなけりゃ、加減しなくてもいいな。大丈夫だ、俺はフェーガンの半分くらいは優しい」
呟かれた言葉共に、繰り出された拳はウィリアムの奥歯と鼻骨をへし折った。
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