デートの誘い
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「あなたを待っているつもりはございません。ケビン・ウィリアム候補生」
冷ややかなライナの声が、静かな木々の隙間に漏れた。
+ + +
冷たい言葉に対して、ケビン・ウィリアムは仰々しく肩をすくめて見せた。
「酷いな、手紙を見て来てくれたんだろう?」
「そうですね。嘘の手紙で騙されたという事です」
「その割には驚いていないみたいだけれど?」
「マクワイルド先輩が私に恋文を送るなど、考えられませんでしたから」
手紙に記載された差出者の名前。
そこに書かれたアレス・マクワイルドの名前。
冷静に考えなくても、あり得るわけがない。
手紙の主が本人である可能性など、十パーセントもないだろう。
そう理解していても、ライナは浮かぶ不愉快な気持ちに、胸を掴まれた。
わかっていたことだから、落ち込む必要などない。
冷静な頭がライナを落ち着かせるが、落ち込んだ心は晴れそうもない。
だから、単純な怒りの視線をウィリアムに向けながら、足を進めた。
「おいおい。帰るつもりかよ。せっかく来てくれたんだから、話をしてくれてもいいんじゃないか」
「あなたと話す言葉を持ちません」
「アレス・マクワイルドと付き合うよりは楽しいと思うけれど?」
「お断りします。あなたとお付き合いをしても、私には何の利点もないでしょう」
「それが先輩に対する言葉か、フェアラート候補生」
「先輩と思われたいのでしたら、偽の恋文など使わぬことです」
冷静な言葉に対して、ウィリアムは唾を吐き捨てた。
その表情に浮かぶのは、爽やかな青年ではない。
眉間にしわを寄せて、ライナを見つめる。
「――後悔するぞ」
「随分な三下な言葉ですね、先輩」
冷ややかな言葉に、ウィリアムは笑った。
「騙されるのがわかっていて、一人で来たのか。自信過剰だな……なぜこの場所を指定したと思う」
「先輩が振られる無様な格好を、見られたくないためでしょう」
「出てきていいぞ」
ライナの言葉に対して、声を立てれば、草が揺れる音がした。
月明かりの中に次々に浮かぶのは、制服姿ではない――年齢層も違う男達だった。
ピアスをつけている者。
ドクロのロゴが入ったジャケットを着ている者。
少なくともそれらの姿をするものに、学生はいない。
「君は知らなかったみたいだね。ここの後ろのフェンスに付いている警報装置は随分と前から壊れていてね。脱走の穴場になっているんだよ――だから」
そこでウィリアムは下卑た笑いを浮かべた。
「俺の友達も自由に入ってこれるのさ」
男達の周囲をライナが取り囲めば、ライナは表情を変えずに、なるほどと頷いた。
「端的に申し上げましょう。下種どもと」
+ + +
ラ
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