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IFのレギオス そのまたIF
糸の紡ぐ先
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いると己が時間をかけ澱んでいくようだ。

 紫煙を曇らせ窓の向こうを見やる。ガラス一枚隔てた向こうに広がるのは都市の街並みと、荒れ果てた荒野。人の住む世界と、住めぬ世界。その境界がはっきりと見て取れた。
 その荒野には住民がいる。汚染獣という世界の覇者。人類を脅かす、仇敵。
 だが、それさえも己にとっては十分な敵にはなりえない。幾多もの武芸者が血を流し徒党を組んで当たるような敵も、己にとって暇つぶしの域を出たことはない。
 気づけば血を流すことを恐れた者たちは背に控え、己一人が外敵に相対するようにさえなっていた。

 かつて、何もかもを捨て外に出ようと思ったことはあった。狂ったように汚染獣と戦う都市があると噂に聞いた。地獄のような都市。けれど己にとては天国になるやもしれぬ。それが本当ならばそこに行きたいと願った。
 だが出る決意が固まる少し前、狙ったように都市に汚染獣が襲来した。それで一時期遠のいていたその思いが再び己の中で鎌首を持ち上げようとしていた。
 ガラスの向こうを、どこまでも続く荒れ果てた地を睨む。その彼方から汚染獣が、まだ出会ったことのない化物が来て欲しい。そう切に望む。
 視覚とともに自然と強化された聴覚。それがどこから届く子供の声を捉えた。

「赤ん坊だな」

 剄によって鋭敏になった耳は多くの情報を取り入れる。声の位置、そこに群がる人々。耳以外からも伝わってくる情報が己にその現状を詳細な状況を与える。
 その赤子の存在は既に気づいていた。ただ興味がなく、今の今まで気に留めていなかっただけ。だが暇つぶしにでもなればいいとその方向へ自然と足が向いていた。この屋敷に子供が、それも赤子が入るのは酷く珍しかった。

 辿りついた先はメイドたちの詰所だ。扉の前には何人かのメイドが集まり、そのうちの一人が足に抱きつく二人の赤子に困惑した表情をしていた。恐らくそのメイドが子の母親なのだろう。
 赤子と言っても既に自分の両足で立てるらしい。赤みがかった茶髪の男児と、明るい栗色の髪の女児。ともに瞳に涙を浮かべていた。つい先程まで泣いていたのだ。
 メイドの一人が自分たちの主の姿に気づく。他の者も慌てた様子で頭を下げる。

「申し訳ありません。この者が子を……」
「新入りか」

 そのメイドの顔は記憶の中にはなかった。

「はい。先日既にお目通りさせましたが、十日ほど前に入ったばかりでしてこの様な不始末を。強く言って聞かせます」

 その言葉に思い出す。確か前いた都市から何らかの事情で出ることになり、連れ合いは既に亡くしたと説明されていた。興味の範疇外だった故に今の今まで忘れていた。
 そのメイドの境遇や処罰になど興味はない。特に何もいう気は起きず黙ってその子供二人を見る。女児は母親の方から顔を向けなかっ
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