アナザーレコード アルマの手記
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「おとうさん。なんでおとうさんはおかあさんをすきになったの?」
あるところに一人の科学者の男がいました。
科学者は非常に知的好奇心に溢れていました。棚から溢れ床にまで溢れた本から得た知と、元来持っていた才能を遺憾なく好奇心ために利用しました。
疑問を抱き、仮定を立て、検証し、再現。ある時は機械を作り、ある時は解体し。時として倫理観に外れ、好奇心のままに他人を傷付けることもありました。己が興味の先を理解する。その先にあったのは世界を知りたいという本能に似た欲求。その為だけに動きました。
科学者が天才だと言われるようになるまで、そう時間はかかりませんでした。科学者が情を知らぬ狂気の男だと言われたのに時間はかかりませんでした。
ある時、そんな科学者に運命の出会いがありました。
一人の武芸者の女性と出会い、恋に落ちたのです。
武芸者は情が深く、規律を重んじる清廉高潔な人でした。
誰かの悲しみには共に涙し、誰かが傷つけば心を痛めるとても愛に溢れた強い、女神のようだと噂された女性でした。
そんな武芸者の心を引く為に男は頑張りました。
人の心は電気信号と有機反応、そして蓄積された過去のフィードバックに過ぎないと思っていた科学者は、初めて言葉にし難い感情を得て動きました。それは酷く稚拙で、滑稽なものだったでしょう。
科学者をヒトデナシと哂った人たちはその様を見て、あいつも人の子だったのだと笑いました。
多分に漏れず武芸者もそんな必死な彼を笑い、笑いすぎて溢れた涙を拭って仕方がないなと笑顔で科学者の手を取りました。
そして二人の間に、娘が生まれました。
二人はその娘に、アルマと名付けました。
『アルマ、見てごらん。中はどうなっているかな』
『すごいごちゃごちゃしてるー』
『そう思ってしまうのもしょうがないね。でも、それは見ただけで知らないからだ。……っと、よし。アルマ、これを見てごらん』
科学者は機械の箱の中の一部分以外を紙で覆い、覆われていないそこから小さな破片を外してアルマに見せた。
『これはコンデンサだ。見たことはあるだろう』
『しってるー。はんたいからだとながれないんだよね』
『そうだ。この周りには同じようなのがたくさんある。なら細かい原理はわからなくても、ここがどんな役目をするかは分かるね』
科学者は紙に制御と書き、見えていたそこに紙を貼って隠した。
『他のところも同じさ。細かい所がわからずとも、一つに纏めて隠せばいい。こうすれば全体の流れが分かる。それで理解するんだ』
『かくしたままでいいの? なんかそれ、やだ』
『わかるようになったとき、改めて開けばいい。その気持ちこそが探究心だよアルマ。知りたければ隠された匣を開くし
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