第四話 真相
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ルテンベルク、フォルゲンは何をやった? ……分からねえ、さっぱりだ。小僧、お前の言う通りだ、リューネブルクは良い時に死んだ。奴が生きていてもこの先は地獄だろう、女房は兄殺しだ、誰からも相手にされねえ、奴は全てを失った。……待てよ、リューネブルク? ……リューネブルクか! 狙いは奴か!」
爺さんが叫ぶと勢いよく立ち上がった、また宙を睨んでいる。“そうか、そうだったのか”と爺さんが呟いた。そして大きく息を吐くとドスンと音を立てて椅子に座った。
「どういう事なのでしょうか、リュッケルト少将」
キルヒアイスが問い掛けると爺さんが左手で頬の傷跡を強く撫でた。
「俺達は間違っていたのかもしれねえよ。リューネブルクには後ろ盾が有ったんだ。いや、俺達だけじゃねえ、リューネブルクもそれに気付いていなかった。だから今回の様な事になったのか……」
疲れた様な声だ、爺さんの傷跡を撫でる仕草は終わらない。予想外の事が有った時の癖なのだろうか? 話の内容にも興味が有ったがそっちの方にも興味が湧いた。
「後ろ盾ってハルテンベルク伯爵の事か?」
「ああ、伯爵は内務省の実力者だ。警察の……、えーっと、何だった?」
爺さんが俺とキルヒアイスを交互に見た。
「警察総局次長です、次期警視総監の最有力候補、いずれは内務尚書になるだろうと言われていました。ハルテンベルク伯爵はまだ若いですから長く務めるのではと……」
爺さんがキルヒアイスの答えに“それだ、それ”と頷いた。
「しかし将来はともかく今は内務省の一官僚でしかない、それが後ろ盾になるのかな?」
「……リューネブルクが大将に昇進するまで何年かかると思う?」
ボソッとした口調だった。また妙な事を言う、キルヒアイスと俺は顔を見合わせた。
「分からないな、戦争は毎年二回有るが地上戦は……」
俺が口籠るとキルヒアイスも頷いた。
「よし、じゃあ仮に六年かかったとしよう。その時、ハルテンベルク伯爵はどうなっている?」
爺さんが俺達の顔を覗き込んだ。
「警視総監にはなっているだろうな。もしかすると内務尚書になっているかもしれない……、そうか、そういう事か、爺さん……」
愕然とした、俺だけじゃない、キルヒアイスも愕然としている。爺さんは傷跡を撫でるのを止めていた。
「俺はリューネブルクはこれから下り坂に入ると思っていた、三十五歳だからな。リューネブルクも大分焦っていたからそう思っていたんだと思う。お前もそう思ったんじゃないか?」
「ああ、そう思っていた」
「見誤ったぜ、ハルテンベルク伯爵はこれからが登り坂なんだ。内務尚書だぞ、内務尚書。省の中の省、内務省の親玉だ。あそこは警察、地方行政を握っている。治安維持局もだ。そんな奴を簡単に敵に回せるか?」
「……いや、それは難しいと思う」
俺が答える
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