暁 〜小説投稿サイト〜
銀河親爺伝説
第三話 臭い
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話



■  帝国暦485年 11月 1日  イゼルローン要塞 ラインハルト・フォン・ミューゼル



「爺さん、俺は出撃するけど爺さんは行かないのか?」
「ああ、行かねえ。この辺で訓練でもしてるよ」
「上から文句言われんじゃねえのか?」
拙い、爺さんの口調がうつってる。出征前に姉上に会った時にも言葉遣いが悪くなったって言われた、気を付けないと……。

「大丈夫だ、訓練してるんだからな。俺は兵卒上がりだから文句は言われねえよ。帝国軍は俺に頼るほど柔じゃねえさ、だろ?」
そう言うと爺さんは片目を瞑ってニヤッと笑った。
「そうか、なら良いけど」
「お前こそ気を付けろ、無理すんじゃねえぞ」
「ああ、分かってる」

「本当に分かってるか? 連中、ヴァンフリートで負けたのに先手を打ってイゼルローン回廊の出口を封鎖しやがった。張り切ってやがるぜ、どうにも嫌な感じだ」
爺さんが顔を顰めた。なるほど、そう言われればそうだな。でも感じ過ぎのような気もする。帝国と反乱軍は三百回も戦っているのだ。こんな事が有ってもおかしくは無い……。
「感じ過ぎじゃないのかな?」
俺の言葉に爺さんはフムと唸った。

「お前、この要塞を落とせるか?」
妙な質問だ、思わずキルヒアイスと視線を交わしたがキルヒアイスも困惑している。
「……どうかな」
どうかな、あまり考えた事は無かったがやりようは有ると思う。だが俺が反乱軍の指揮官ならこのイゼルローン要塞にこだわらずに帝国を攻撃すべきだと考えるだろう。爺さんがまたフムと唸った。

「俺なら要塞攻防戦なんてやらねえ。負ける可能性が滅茶苦茶高いからな。わざわざ好き好んで二連敗する事は無いさ、だろう?」
「……確かにそうだな。爺さん、連中、勝算が有るのかな?」
爺さんが顎に手をやった。

「さあて、俺には分からん。このイゼルローン要塞を落とす方法なんて俺にはさっぱり考えつかんからな。だがな、ミューゼル、負けるのを承知で戦う馬鹿は居ないんじゃねえか?」
「なるほど、確かにそうだな」

つまり勝算が有るという事だ。爺さんの言葉を借りれば反乱軍は張り切っている事になる。キルヒアイスも頷いている。油断は出来ない。
「前回の攻防戦は味方殺しでようやく勝ったんだ。今回だってどうなるか……、イゼルローン要塞は難攻不落なんて浮かれてる奴の気が知れねえよ。だからな、気を付けろよ」
「ああ、そうする」
爺さんがひらひらと手を振って見送ってくれた。

旗艦タンホイザーに向かう途中、キルヒアイスが話しかけてきた。
「妙な方ですね、リュッケルト少将は」
「そうだな」
「あれは何なのでしょう。戦略でも戦術でもありませんが……」
キルヒアイスが首を傾げている。確かに妙だ、何と言えば良いのか……。


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ