第三話 臭い
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さんが頷いた。
『まあ世の中こんなもんだ、そうそう上手くはいかん。混戦状態になったら撤退しろ、飲み込まれる事はねえぞ、援護する』
「分かった」
キルヒアイスが反乱軍が予備を動かしていると報せてくれた。やれやれだ、ミュッケンベルガーは自らの判断で混戦状態を作り出そうとしている。いずれ自分のした事を呪うだろう。第六次イゼルローン要塞攻防戦は第五次イゼルローン要塞攻防戦と同じ展開になりつつある。どうやって収拾するつもりなのか……。
俺の艦隊が撤退した後、戦場は予想通り収拾のつかない混戦状態になっていた。俺と爺さんは巻き込まれないようにしながら遠距離砲撃をするだけだ。殆ど意味は無いだろう、戦闘に参加というより観戦に近い。爺さんとの通信は維持したままだ。思い切って気になっている事を訊いてみた。
「爺さん、爺さんは何時反乱軍の作戦を見破ったんだ?」
『ふむ、正確には俺は反乱軍の作戦を見破った訳じゃねえんだな』
えっ、と思った。スクリーンに映る爺さんは困ったような表情をしていた。どういう事だ? キルヒアイスも訝しげな表情をしている。
『俺はな、お前さんを見ていたんだよ、ミューゼル少将』
「俺?」
爺さんが頷いた。一体爺さんは何を言っているんだ? 俺を見ていた? 訳が分からない、キルヒアイスも困惑している。そんな俺達を見て爺さんが笑い声を上げた。
『他の連中が一生懸命反乱軍を挑発している時、お前さんは全く動きを見せなかった。ボンクラ指揮官ならともかくお前さんがだぜ、有り得ねえ話だ。どう見てもあれは獲物を待ち伏せするトラかライオンの姿だぜ。何かを待っている、そう思ったよ』
「……」
『だから俺も待った。お前さんが何を待っているのか見極めようとしたんだ。そうしたら反乱軍のミサイル艇が妙な動きをするじゃねえか、ピンと来たな、お前さんの狙いはこれだって。つまりお前さんはミサイル艇が攻撃を仕掛けてくる、そう見ているんだって分かったのさ』
「爺さん、あんた……」
爺さんがまた笑い声を上げた。
『そこで初めて反乱軍の狙いが見えたんだ、お前さんの作戦もな。後は競争だ、そしてほんの少しだが俺の方が早かったって事だ。狡いなんて言うなよ、武勲は横取りしていねえ、獲物を先に獲っただけだ』
「……」
信じられない、爺さんは反乱軍じゃなく味方である俺の動きを見ていたのか……。そこから反乱軍の作戦を読んだ……。こんな戦い方が有るなど幼年学校では教わらなかった、実戦でも見た事も無ければ聞いた事も無い。キルヒアイスも呆然としている。臭いだと思った。爺さんは戦場で臭いを嗅いでいる、獲物が何処にいるか臭いを嗅いでいたんだ。
「途中で俺に譲ったのは何故だ? 俺に悪いと思ったのか」
爺さんが苦笑を浮かべた。
『違うよ、戦闘ならば俺より
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