第三話 臭い
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うーん、よく分からないが、……流れ、かな」
「流れ、ですか」
自信が無かったから曖昧に頷いた。キルヒアイスも分かったような分からない様な表情だ。しかし他に適当な表現が有るとも思えない。それとも臭いか? 段々非科学的になって来るな、しかし爺さんの言う事が間違っているとも思えない。
「普通なら武勲を上げるために出撃しそうなものですが……」
「昇進には興味ないみたいだ、後方に下がりたいと言っていた」
「……」
「もう何十年も戦ってきたからな、飽きたのかもしれない。良い思い出よりも嫌な思い出のが多かっただろうし……」
キルヒアイスが頷いた。
「そうですね、……でも、惜しいですね」
「ああ、そうだな」
惜しいと思う。爺さんの用兵家としての力量は決して低くない。俺とキルヒアイスは何度か爺さんとシミュレーションを行った。爺さんの用兵家としての実力を試してみたいと思ったのだ。嫌がるかと思ったが爺さんは“年寄りを苛めるんじゃねえぞ”と笑いながら応じてくれた。五戦ずつしたが俺は全勝、キルヒアイスは四勝一敗だった。
戦績だけ見れば圧倒的に俺達が優位だ。だが実情はちょっと違う、爺さんは嫌になるほどしぶとかった。なかなか崩れないのだ。優勢だが圧倒できない、隙を見せれば逆撃をかけてくる怖さを持っている。実際キルヒアイスの一敗は勝利を確信してほんの少し油断したところを一気に押し返されたものだ。押していただけに自分のミスで押し返されて慌ててしまった、そんな感じだった。
実戦ならもっと手強いだろう。多少不利でも味方の増援が来るまで持ち堪えるはずだ。問題は信頼できる味方が居るか、だな。兵卒上がりだからと言って見殺しにするとは思えないが救援に手を抜く奴はいるかもしれない。爺さん自身、それが分かっているから出撃をしないのではないかと俺は思っている。或いは後方に下がるために戦意不足を装っているのか。どちらも有りそうだ、喰えないジジイだからな。
「妙な爺さんさ。強かで喰えない、でも悪い奴じゃない。リューネブルクなどよりはずっとましだ」
「良いんですか、そんなこと言って。この要塞に居るんですよ」
「構わないさ、リューネブルクだってこっちに好意なんて欠片も持っていないからな」
キルヒアイスが“またそんな事を”と苦笑した。
リューネブルクが今回の出兵に参加している。気になるのはオフレッサーも今回の出兵に参加している事だ。爺さんの話ではあの二人は上手く行っていないらしい。それが一緒に居る……。抑えようというのか、それとも武威を見せつけようというのか……、それとも俺の考え過ぎなのか……。
■ 帝国暦485年 12月 1日 イゼルローン要塞 ラインハルト・フォン・ミューゼル
反乱軍の狙いは読めた。本隊を囮として利用しミサイル
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