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久遠の神話
第五十六話 中華街その十五

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「味はな」
「海鮮ものが凄いんですよね、確か」
「そうだよ。歴史の教科書で乾隆帝って出ただろ」
「清の皇帝の」
「あの人も時々広州まで行って食ってたらしいからな」 
 その味に魅せられたからだ。つまり皇帝ですら魅了するまでだというのだ。
「随分贅沢が好きな皇帝だったらしいけれどな」
「それでその乾隆帝も食べた広東料理を」
「今から食いに行くか?」
「具体的にはどのお店ですか?」
「それは今から探すさ」
 この中華街の中でだというのだ。
「広東料理な」
「それじゃあ」
 上城も中田のその言葉に頷いた、そしてだった。
 近くの土産ものの店に入ってそこの親父に尋ねた、すると親父は二人に笑顔でこう答えた。
「じゃあ子美なんかどうでしょうか」
「子美?」
「はい、そこは前から美味しかったがですが」
 それがだというのだ。
「最近は特によくなってますよ」
「へえ、そんなに美味いんだな」
「本場の親戚が新しく入りまして」
「で、その本場から来た親戚の人の腕がいいんだな」
「凄腕ですよ」
 親父は笑顔で中田、そして彼と共にいる上城に話す。
「まだ若いですが」
「そうか。それじゃあな」
「はい、そのお店ですね」
 上城は自分に顔を向けてきた中田に答えた。
「行くのは」
「そこだな。それで親父さん」
 中田は親父に顔を戻して尋ねた。、
「そのお店は何処だい?」
「はい、すぐそこでして」
 親父は店の場所も笑顔で話す。
「この店を出て左に少し行けば」
「そこか」
「そこですよ」
 親父は教えていく。
「私も結構行きますよ」
「同じ中華街の人もか」
「同じ中華街ですから」
 だからだというのだ。
「美味しいと聞いた店はすぐに行きますよ」
「そして食べるんだな」
「そうです、しかも美味しいものを多く食べているので」
「味もわかってるってことだよな」
「値段も」
 華僑はシビアだ、それでこうしたこともわかっているということだった。
 中田は親父との話を済ませてから上城に顔を向けて言った。
「じゃあ行くか」
「はい、そのお店に」
「で、一つまた提案があるけれどな」
「提案?」
「あの娘も呼ぶかい?」
 樹里をだというのだ。
「携帯でな」
「そうですね。美味しいものを食べるのならですね」
「二人より三人だからな」
 二人共このことは同じ考えだった、上城はすぐに携帯で樹里と連絡を取ったがその結果は彼にとっても中田にとっても望ましいことだった。
 二人から三人になり店に行くことになった、そしてそこでまた運命の出会いを経験することになるのだった。


第五十六話   完


                    2013・1・19
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