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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
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力を全開で発動。下から強引な形で彼女の小さな身体を跳ね上げ、その一瞬後に自らの身体も後方……一先ず安全圏で有ろうと思われる地点まで退避を行う俺。

 普通の人間ならば、空気の抵抗だけで死亡に至る被害を受ける勢いで上空高くに投げ出されるタバサ。

 しかし!
 しかし、彼女が蒼穹高く舞った瞬間、彼女が突き抜けようとした空間に亀裂が入った。
 そして、彼女の手にする七星の宝刀が、その亀裂の向こう側に半ばまで消えている。

 そう。それは、何もないはずの空間に入った空間自体の断裂。タバサがそのまま進めば、その空間の断裂に巻き込まれた事は間違いない位置に、何の支えもなく何かに。まるで向こう側の世界から力任せに引き裂かれたような歪な形をした亀裂が存在していた。
 その無限の彼方に続くかのような断裂に向かって吹き込む大気が、俺たちが動く事に因って発生した土埃が。そして、周囲に散らばっている翼人たちの羽根が、その空間に出来上がった亀裂の向こう側に向かって吸い込まれて行く。

 そして、向こう側から此の世ならざる声が響き渡り、それと同時に世界を七色に染め上げる強い光輝が漏れ出して来た。

 この瞬間、世界が断末魔の悲鳴にも似た軋みを大音声で上げ、ゆっくりと。そう、酷くゆっくりと世界は紛う事なき異世界……。狂った世界へとその相を移したのだった。

「やれやれ。矢張り、地球産は使えないな」

 弾除け。いや、今回の場合は盾の代わりぐらいにしか使えないか。そう、疲れたような口調で嘆息混じりの言葉を吐き出すナナシ。
 その瞬間、亀裂の入った空間の向こう側からドロリとした何かが俺の目の前に零れ落ちて来る。

 強い腐臭を放つそれが亀裂の向こう側の世界から人間の住む世界へと、粘液状の糸を引きずって落ちて来た瞬間、ドサリと言う重い音と共に大地にその醜い姿を晒した。
 非日常の中に存在する、日常を示す物理的な現象。

 亀裂より吐き出された不気味にうねる巨大な肉の塊を見つめる俺。
 そして、発生する不気味な空白。更に侵食度合いが強く成る異世界の気配。
 それ……亀裂より吐き出された肉塊は、タバサの霊刀を受けた傷痕からはごぼごぼと強い腐臭を放つ粘液状の何かを流出させ続け、その身体全体より発せられる光は、赤から青へと弱々しく明滅を繰り返し、最後に黄色の光りを放ってそれっきり何の反応も示す事はなくなって仕舞っていた。

 次の瞬間、その大地に落ちた不気味な肉塊が徐々に姿を変えて行く。それは最初、燦燦たる太陽が強く輝く真昼、目に見えない魔物に貪り喰われたと言う魔術の徒が記した忌まわしい書物に記載されている通りの、うねうねと蠢く玉虫色の球体で有った。
 そう。これはおそらくヨグ・ソトースの球体と言われる存在。迂闊にコレに触れると火脹れ、組織の乾
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