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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
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うよりは、アラブの一部で使われて居たジャンビーヤと呼ばれている両刃のナイフに形が似ている。

 それぞれが独自の意志を持つ者の如く、真っ直ぐに接近しつつ有る蒼銀の光輝に複雑な軌道を描きつつ迫るジャンビーヤ。そして次の瞬間には、タバサの放ったすべての釘は無効化されて仕舞って居た。

 但し、そんな攻撃など所詮は牽制に過ぎない。

 タバサの釘を迎撃が為された瞬間、切り結ばれる二振りの蒼銀の光輝と、白銀の二振りの曲刀。
 風を――否、大気さえも完全に切り裂き、視覚的な意味で表現するのなら、地点と地点の間で瞬間移動を行ったかのような雰囲気で移動。少なくとも、人間の瞳では絶対に捉える事の出来ない速度で動いた三者の、ほぼ中央の位置で八相から斬り降ろされたタバサの一太刀を左手に顕われた白銀の偃月刀で。同時に、地を這うような位置から斬り上げられた俺の一刀は、右手に顕われて居た偃月刀で受け流して仕舞うナナシ。

 そう、この瞬間に俺とタバサの完全に動きと息を合わせた攻撃が、この正体不明のナナシの青年によっていとも簡単に無効化されて仕舞ったと言う事。
 一瞬の交錯の後、再び、最初の距離。二十メートルほどの距離を置いて相対する俺、タバサと、何モノにも名付けられていない、……と自称している青年。

 今の動き。俺とタバサは、精霊の加護に因り常人では絶対に為し得ない能力を示して居る。
 その二人と互角以上の能力を示して居る以上、このナナシは本当に名付けざられしモノや、門にして鍵の顕現の可能性も有りと言う事に成ります。
 まして……。

「その両手に召喚した偃月刀は、もしかするとバルザイの偃月刀とでも言うのか」

 両手に顕われた刃渡り五十センチ程の刀を構える事もなく、ただ月下に立ち尽くすだけのナナシの青年に対して、そう問い掛ける俺。
 そう。今の彼はただ立ち尽くすのみ。何時の間にか俺とそっくりに擬態していた姿から、最初に顕われた時のまるで地球世界の男子高校生のようなブレザー姿に戻り、何の誤謬も、そして訂正さえも行う必要がないぐらい、自然な姿で無防備に立ち尽くすのみでした。

 但し、故に其処に存在して居ながら、何故か彼の存在自体を認識出来難く成っていたのですが……。

「俺の本体を召喚しようとする時に用いられる以上、これは常に俺と共に在る」

 青年はそう答えてから、少し嗤った。
 その瞬間、自らが気付かない内に全身が震えている事に気付く。そう、その時のナナシの青年の瞳に浮かぶモノを見た瞬間に、目の前に居る存在が自分とはまったく違う異質なモノで有る事が改めて確信させられたのだ。

「外なる虚空の闇に住まいしものよ、今ひとたび大地に現れん事を我は願い奉る」

 ……そう言えば、ヨグ・ソトースの人間体と言われる存在は薄いヴェー
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