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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
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いや、当然、既に星辰が整い、生け贄が神に捧げられた後で、更に神を讃える呪文が唱え終わっているのですから、後はそいつ……。名づけざられしモノで有ろうが、門にして鍵で有ろうが、何モノかが出て来るのはほぼ確実。
 可能性としては、その何モノかが顕われるまでの時間潰しのような状況で、このナナシの権兵衛さんは俺の話し相手をしている状態だとは思うのですが。

 但し、現状で出て来る邪神の正体は不明。出て来た後に対処するしか方法がない状態。
 まして、ここに防御用の陣を構築しようにも、あまりにも周囲の気が悪過ぎて真面に機能する陣を構築するには多少、周囲の邪気を祓う必要が有る。
 もっとも、そんな事を始めたら、この目の前のナナシの権兵衛がどう出るか判らない。

 ならば……。

 俺がそう覚悟を決めて時間の引き伸ばしの為に会話を続けた。朝日が昇れば、こちらには増援が訪れる可能性が高い。

 しかし――――

 ナナシの権兵衛が再び嗤った。それは、無気力な青年だった時とは違う妙に人間臭い、そして、俺の顔では決して浮かべて欲しくない類の嗤いで有った。

「無駄に成る事が判って居るのに、それでもどうしても試すと言うのなら止めはしないが。
 どうする、試して見るか?」

 俺と同じ声が、星々から……。そして、蒼き偽りの女神から放たれる悪意ある妖光の下で風に乗り俺とタバサの元へと辿り着く。
 そう、何時の間にか、木々の間を縫うようにして風が舞い始めて居たのだ。

 微かな妖気の籠った冷たい風が。
 それは何処か闇の奥。遙か蒼穹の彼方に存在する黒き湖から吹き寄せる魔風で有ったのだろうか。それとも、時空間の底の底、混沌の只中から吹き寄せる魔風なのか。

「知って居るのだろう。神の贄に捧げられた者の魂が戻って来る事は有り得ないと言う事は――――」


☆★☆★☆


 初手は俺でもなければ、ナナシの権兵衛でもなかった。
 俺とまったく同じ姿形をしている相手に対するとは思えないような思い切りの良さで、右腕を振るうタバサ。
 その繊細な手から発せられた数本の飛刀が、かなり西に傾いた蒼き女神の光りを受けて蒼銀色の輝きを放つ。

 そう。その煌めきに彩られた飛翔物体はその美しさに比例するように、ひとつひとつに必殺の威力を内包し、ただ棒立ちで立ち続けるナナシに向かって飛んで行くのだ。

 しかし、その瞬間。

 何の前振りもなくナナシの周囲に浮かび上がるナイフ。
 これはおそらくは一種の鍛造魔術(たんぞうまじゅつ)。タバサが放ったのが、俺が扱う物と同じ。かなり長い目の釘ならば、ナナシの周囲に浮かび上がったのは特徴的な湾曲を持ったナイフ。全長は十センチ以上、二十センチ未満と言うサイズ。
 西洋のダガーと呼ばれるナイフと言
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