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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第76話 名付けざられしもの
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名と言う訳では有りませんから、例え、相手が俺に対して名前を使用した呪詛の類を行って来たとしても、生命に関わるような実害を被る事はないのですが……。

 そんな俺の様子を、やる気をあまり感じさせる事のない様子で見つめ返すナナシの権兵衛。しかし、彼から感じるのは肌をピリピリさせるような危険な雰囲気ではなく、普通の……。普通に存在して居る当たり前の男子高校生以上には見えませんでした。
 おそらく、コイツも俺と同じように気を隠して……。

「何を言っているのかさっぱりと判らないんだが、オマエさんの事を何故、俺が知って居るのかと言う問い掛けならば、知らない方がどうかしている、と答えるべきなのかな」

 しばらくの間、俺の事を気のない視線で、耳の穴に右手の人指し指をツッコミながら見つめていた青年がそう答えた。
 本当に、この状況。周囲に散乱する元翼人たちを作り出したのが彼だとは考えられないような面倒臭げな様子。
 まして、これだけの殺戮を行いながら、その姿は普通の高校生男子そのもの。返り血などでその姿を汚している訳でもなければ、戦闘によって汚れている訳でもない。
 まるで、朝、登校する直前のような綺麗な姿形。

 但し……。

 但し、その言葉を発し終え、右手の人指し指の先に息を吹きかけた瞬間、彼が発する雰囲気が変わった。
 そして、それは何処かで感じた事が有る雰囲気。
 これは……。

「オマエさんは有名人だぜ。有る一部の存在からはな」

 そう言ったナナシの権兵衛が俺の顔を見つめて、初めてやる気の感じさせない表情以外を見せる。
 ……いや、その時、俺の目の前に存在して居たのはやる気を感じさせない、一般人に埋没するような目立たない青年などではなかった。

「俺とオマエは今生では一度。それ以前の生命でも何度か出会っているはずだぜ」

 其処……。先ほどまで目立たない青年が存在して居た場所には……。

 毎朝身なりを整える時に必ず鏡の中に存在する少年。いや、少年から青年への(きざはし)を上り始めた存在。
 これと言って目立つ特徴の有る顔立ちではない。ただ、瞳に……今では蒼と紅と変わって仕舞った瞳にのみ強い力を感じるその蒼い髪の毛の少年が、その顔に似合わないある種の笑顔をこちらに向けて居たのだ。
 吐き気をもよおす程の邪気と狂気に包まれた笑み。生命体が持つ、本能的な恐怖心を呼び覚ます酷く危険な笑顔を、俺とタバサに対して魅せて居たのだ。

 その表情、そして雰囲気は、正に暗黒の皇太子と呼ぶに相応しい様相。

「貴様は――――」

 そして、現在、ヤツが放っている雰囲気には確かに覚えが有ります。火竜山脈で不死鳥の再生に関わった事件の翌日に魔法学院で開かれたダンス・パーティ。俺的に言うのならヴァルプルギスの
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